夏でも雪を頂く標高3000m級の立山連峰。水深1000mの海底谷を刻む富山湾。高低差4000mが生み出す四季折々の豊かな自然、食、文化が富山県にはあります。
歴史と伝統、そして活力にあふれた「越の国」を発見する旅に、あなたも出かけませんか。富山の魅力を5つのテーマごとに紹介します。
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立春から二百十日。山から里に吹き下ろす風が強くなる頃、越中・八尾の町はおわら風の盆で賑わいを見せる。
雪洞(ぼんじり)の灯りに浮かぶ古い町筋を、哀愁をおびた三味線や胡弓の音にあわせて、優雅に踊り流す編笠の男女。
その姿に魅了された2人の女性が、再び八尾の地を訪ねるところから今回の旅は始まる。
街を歩いていると、様々な出会いがある。今年初め日本橋髙島屋で、1階のホールに掲げられた五色のタぺストリーに目が留まった。光を透かして美しいグラデーションを描き出すその薄絹は「城端」で織られたものだという。ジョウハナ……初めて聞く地名だった。富山県南砺市の中央、かつては絹織物で栄え、雅な町人文化が花開いた町。ネットで城端を検索していると、昨年秋、おわら風の盆を見るために友人と訪れた八尾の町が頭に浮かんだ。
おわらが開催されるのは、毎年9月1日から3日間。唄と楽器を奏でる地方と、揃いの編笠をかぶった男女の踊り手が優雅な振りで町筋を流していく。11の町それぞれで踊りの衣裳も振り付けも異なり、観光に訪れた人たちは町々をまわって楽しむ。私と友人は夜半過ぎ八尾の町に入った。夜の帳が降りた町筋には雪洞が灯され、遠くから三味線と胡弓が奏でる哀調を帯びたおわらの旋律が聞こえてくる。真夜中の町をあてもなく歩いていると、まるで夢幻の世界に迷い込んだかのような錯覚にとらわれる。「おわらの3日間だけ八尾は“幻の町”になるんだよ。今度は普段の八尾も見に来てごらん」。おわらの唄い手でもある民芸品店のご主人に言われた言葉を思いだした。
よし、もう一度富山に行こう。
photo:Atsushi Hashimoto / Mami Yamada
illustration:Megumi Asakura
text:CREA Traveller
produced:Sachiko Seki
cooperation:Toyama-ken / Toyama-shi / Takaoka-shi / Nanto-shi