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「失敗できないので」と口にする中島

 「ダサい話なんですけど『どこにオチを持って行きたいんでしょうか? ちょっと教えてもらっていいですか?』ってスタッフさんに聞いてやってましたね。分からないことを全部」。「オチをどこに持っていくのか」をスタッフに訊ねるのはある意味すごいことだが、この話を聞いたときに「ああ、本当に一人で戦っていたんだな」と強く感じたのを覚えている。

 誰でも自分に任された仕事は、失敗したくないと思う。しかし失敗してしまうこともある。一度の失敗で命まで取られることはないだろうと開き直って、また立ち上がれる。しかし、中島は「失敗できないので」ともしばしば口にしていた。失敗したときに開き直って立ち上がれる「自信」が、中島にはなかったのではないか。その自信とは、何があっても助けてくれる、支えてくれる誰か。そして失敗する前に、中島はテレビのMC席から姿を消してしまった。

 「ポッと出のミーハーが(山田)」「素人の延長のような自分が(中島)」不動の女性MCとして一時代を築いた、山田邦子と中島知子。80年代と90年代に「点」で置かれた女性芸人は、孤独と無力感の中で、それでも必死にエンターテインメントであろうとした。

女芸人の壁

定価 1,650円(税込)
文藝春秋
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西澤千央(にしざわ・ちひろ)

1976年、神奈川県生まれ。実家の飲み屋で働きながら、『KING』(講談社)でライターデビュー。現在「文春オンライン」(文藝春秋)や『Quick Japan』(太田出版)、『GINZA』(マガジンハウス)、『中央公論』(中央公論新社)などでインタビューやコラムを執筆。

次の話を読むモリ夫、青木さやか、エレキテル連合 が語る「テレビが女芸人に求めたもの」 過激なイジメで人相が変わっても…

2022.11.09(水)
文=西澤千央