――そこから一気に「売れっ子」になるわけですが、いちばん忙しいときはどういったスケジュールでした?

 

後藤 それまで、アニメとゲームとラジオの収録でスケジュールはわりといっぱいいっぱいだったんですが、そこに、イベントとレコーディングと撮影が入るようになりました。

――アニメの収録は、どれくらい時間がかかるものでしょうか?

後藤 半日ですね。だいたい5時間キープされます。アニメ5本とラジオ6本をレギュラー収録して、ゲーム複数本を並行して収録して、週末はイベントに出演して、空いている曜日にレコーディングして、隙間時間に撮影して……。毎日、朝から夜までずっと何かの仕事をしていました。文字通り、朝から夜まで。でも私は「嬉しい」の一心でした。気持ちに引っ張られて、体も動いちゃうんです。

病院から遠のいていく足…「寝転がると溺れているように息苦しくて、座った状態じゃないと眠れない」

――相当多忙だったと思いますが、体の調子はどうでしたか?

後藤 長年かけて、確実に悪くなっていきました。でも、自分を指名してくれた作品なら、忙しくても全部受けたかった。事務所にお願いしてスケジュールのどこかにねじこんでもらっていました。自分で自分を追い詰めていったんですよね。

 定期検査でも、いろいろな数値が悪化していたのはわかっていたし、薬も増え続けました。「もしかしたら他の病気もあるかもしれないので」と、しきりに精密検査を勧められましたが、受けませんでした。

――それはどうしてですか?

後藤 絶対に悪い検査結果が出ると思ったからです。「まずい病気が見つかったら仕事を辞めなきゃいけなくなるかもしれない」と思ったら、見ないふりをしたかったんです。そのうち、病院にも行かなくなりました。

――その時点でも、まだ持病は事務所に隠していた?

後藤 隠していました。「やりたいことが取りあげられちゃう」と思ったら、言い出せませんでした。新人時代は400ccのバイクで事務所に通っていたくらいですから、周囲からはむしろ健康的なイメージを持たれていたと思います。

2022.09.02(金)
文=加山 竜司