唯一無二の“城食”体験を堪能
会津の大地の豊かさを堪能したら鶴ヶ城へ。城内をエスコートしてくれるのが今回の旅の立役者のひとつである「iino(イイノ)」だ。時速5キロで自動走行するこの車は極上のソファのような乗り心地。まるで城内の景色がゆっくりと流れていくかのよう。幻想的な気分に浸ることができる。
鶴ヶ城で待ち受けているのは“城食”体験。会津若松のシンボルであり、情景豊かな城内の各所で、極上の食事と料理にペアリングした会津の名酒の数々を堪能することができる。
一品目は茶懐石の作法に則った一汁二菜。お米はもちろん、先ほど訪れたつちや農園のものだ。会津藩初代藩主・保科正之が信仰した磐椅(いわはし)神社に奉納されるササシグレという品種で、今では知る人ぞ知る品種だという。向付は鯉の昆布締め。こちらも会津が養殖技術を確立したという会津にゆかりのある食材だ。
合わせるお酒は會州一。会津藩一という名にそぐわぬ、爽やかな香りとすっきりした飲み口が心地よい。
料理の監修を務めるのは、猪苗代沼尻温泉にある沼尻高原ロッジの料理長、黒澤俊光シェフ。地元の食材を活かした料理を作るために、良い食材を求めて自ら生産者を訪ね、対話し、目利きをするという。
当日料理を振る舞ったのは会津芦ノ牧温泉にある大川荘の清水料理長。会津が育んだ食材、技術、器、そして鶴ヶ城というロケーション。「背景にある物語を味わっていただく料理こそが最高のごちそう」だと清水氏は語る。
鉄門を出発したiinoは月見櫓、東側の石垣へと向かい廊下橋を抜け“城食”体験は終了となる。
会津の魅力、そして物語が十全に詰まったおよそ2時間はまるで上質な映画を観ていたかのような気分になること請け合い。廊下橋をiinoに乗りながら最終地点へと向かう時間はまさにクライマックスだ。幻想的な音楽が響く中、モビリティに寝そべり極上の体験を振り返る。今までにない最高の旅体験を味わうことができる。
文=CREA編集部
撮影=山元茂樹