推しエッセイは、突き動かされて書きました

――そして、推しの名前にもジャンルにも触れず沼落ちからの心理状態をつぶさに描き「奇跡の推し活エッセイ」として話題になった「ラブレター・フロム・ヘル、或いは天国で寝言」。これは、連載終了後のCREAのエンタメ特集号(2021年秋号)に、編集部からの依頼で寄稿されたもの。スーさんはCREAの連載終了から間もない頃に沼落ちされたはずで、それをCREAに書いていただけて、さらにこの単行本に収録されたのは嬉しかったです。

 突き動かされて書きましたね。ちょっとどうかしている原稿ですが、書けて良かったです。今回、単行本の編集の人に、推しの仲間の「ヒト化」がどうの、のところ(モブ扱いしていた推しの仲間がだんだんヒト化されていく…というくだり)がちょっとわかりづらいと言われたんですけど、もういいんだそれは! まずCREAの編集の人にわかりづらいと言われて直して、さらに校閲からも指摘されて直して、これが最善なんや! とそのまま行きました。

――でも、わかりづらいかも、というそのあたりの心理の言語化がまた、推しのいる人たちには響いていたようですね。9月の雑誌発売時、そして12月のCREAweb公開時、ともに大評判で、SNSでも盛り上がっていました。

 そう、推し活はツイッター勢なんですよね。同じ月に出たラブコメの本(高橋芳朗さんとの共著『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない:愛と教養のラブコメ映画講座』/ポプラ社)はインスタに上げてもらうことが多かったんですけど、ねっとりした推し活のほうはツイッターなんですよ。皆さんツイートで拡散してくれるからありがたいなと。

――推し活とツイッターの相性の良さ! ちなみにCREAの編集者も単行本の編集者も、「週刊文春WOMAN」(インタビュー企画『彼女がそこにいる理由』を連載中)の編集長も、長らくスーさんの担当をしながら、推しがどなたなのか知らないんですよね。なんとなく、不可侵な聖域という感覚で、お尋ねしていません。

 仕事仲間はほとんど誰も知らないんですよ、出版社の人も、ラジオ局の人も。首根っこつかまえて推しの現場に連れて行った友人はいますけど。推しが誰かを明らかにしなかったことで、読む人が“自分ごと”に思ってくれているんだろうなというのがあります。みんな、書かれているのは自分と自分の推しのことだと思ってくれている。

――あらゆるジャンルの”推す”という行為に普遍的な心持ち、推し活の真髄を言語化されたんでしょうね。スーさんはまだまだこれからも推し続けていかれる。

 我が推しは、引き続き素晴らしい活躍をしてくれています。推しが活躍するたびに嬉しくなる。ありがとう、と思いますね。こんな気持ちに自分がなるなんて思わなかったから感謝だし、推しも活躍の場を広げているので、なんて素晴らしい人なんだと。名前を出したりしなくてよかったなあと思っています。

2022.02.22(火)
文=CREA編集部
撮影=深野未希