「結末をどうするか。遣都さんや柿本監督ととことん話し合いました」(小松)

――高坂と佐薙という不器用なふたりの気持ちのうつろいが、繊細に表現されていました。

 小松 ある意味、私たち次第で変わることができる物語だと思ったので、柿本監督と遣都さんと、どうやっていきたいのかをたくさん話し合ったんです。現場で起こる化学反応みたいなものを楽しめたらいいなと思いながら、やっていました。

 林 そうだよね。菜奈ちゃんがお話していたように、人の心の変化を描いているので、ファンタジー色が強い作品とはいえ、この作品の登場人物たちの些細な瞬間……、一歩踏み出す勇気を持つことが、どれくらいのものなんだろうと考えました。すごく気をつけながら、デリケートに向き合わないといけない。そういう思いを本を読んだときに抱いたので、皆さんと共有しながらやっていきました。

 撮影中は、撮り順がバラバラだったんです。登場人物たちの感情や状況がわかりやすく変化していく物語なので、「今は、どういう進行具合で…」というところで悩んだりもしました。ずっと台本とにらめっこしながら、やっていました。

――現場でもよく話し合い、お芝居でもコミュニケーションをしっかり取られたからこそできた作品なんですね。話し合った末、生まれたシーンについて、特にどこが一番印象深いですか?

 林 結末が変わったところ、ですかね。本来の台本とは異なるエンディングになったんです。

 小松 本当に、そうですよね。最初の台本のラストシーンは、展開が違いましたよね。やっていく中で、監督も遣都さんも私も「最後はここにたどり着かないよね」と思ったので、話して「こういう風にしていきたい」と、みんなで作り上げていきました。(高坂と佐薙は)お互い普通であることを求めていたからこそ、この終わり方がこの物語のラストにおける一番いい答えだったのかなと思います。

――先ほど、小松さんが「現場で起こる化学反応みたいなものを楽しめたら」とお話されていましたが、林さんとの化学変化は存分に感じられましたか?楽しかった瞬間も多かったですか?

 小松 全編を通して、本当に感じていました。初めて遣都さんとご一緒して、ちゃんと話し合えたからこそ、現場で作っていく時間がすごく大事でした。監督は今回のような規模の長編映画は初めてとのことだったので、お芝居の面でわからないことやどうやって演出すればいいのか悩んでいるようなときもあったと思います。そこは、いろいろやってみたり、相談しながら出来たことが本当によかったなと感じています。

2021.11.13(土)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=主代美樹(GUILD MANAGEMENT)/林さん、小澤麻衣(mod’s hair)/小松さん
スタイリング=菊池陽之介/林さん、遠藤彩香/小松さん