伝統と革新がひとつに溶け合って
「利長は城下殖産のために7人の鋳物師を招へいし、この金屋町に鋳物場を開設させたんですって」。千本格子の家並みが美しい高岡銅器発祥の地・金屋町を散策しながら、友人はパンフレットでにわか勉強だ。「実際に作っている現場を見たいんだけど、どうしよう?」「大丈夫、助っ人を頼んだから」と私。高岡市出身で、地場産業の活性化に取り組んでいる女性を紹介してもらったのだ。「高岡銅器は400年の歴史がある伝統産業。以前は仏具がメインだったけど、最近はオリジナル商品の開発にもチャレンジしているの。若手の後継者たちはみんなやる気満々」と助っ人女子。彼女の車で案内してもらった。
最初は能作さんへ。伊勢丹のシャンデリアを手がけた会社だ。「私たちは小売りではなくメーカーですから、ひたすら技術を磨いてきました。その技術力が注目されたことで、新しい試みにチャレンジできるようになったんです」と能作克治社長。オリジナルデザインのベルはニューヨーク近代美術館(MoMA)のショップでも販売されている。錫100%のテーブルウェアは全国的にも有名だ。続いて伊勢丹のドア飾りを手がけた高田製作所さん。常務の高田晃一さんが目指すのは「作り手と使い手、お互いの顔が見えるものづくり」。「誰のためのデザインなのか、そこが大切」と言う。アルミのアイスクリームスプーン「15.0%」シリーズはグッドデザイン賞を受賞している。錫のアクセサリースタンドも人気だ。シマタニ昇龍工房さんは読経にかかせない鏧子づくり百余年。4代目好徳さんは鏧子を金槌でたたいて調音する職人技の持ち主だ。好徳さんが手がけた「すずがみ」はクラフトファンの注目を集めている。
右:自由な形に折り曲げられる錫の特性を生かした「すずがみ」。金槌で表面に文様を刻む
<次のページ> 長い伝統に培われた技術で、新しい発想をカタチに
photo:Atsushi Hashimoto / Mami Yamada
illustration:Megumi Asakura
text:CREA Traveller
produced:Sachiko Seki
cooperation:Toyama-ken / Toyama-shi / Takaoka-shi / Nanto-shi