世界の美味いものを食べ尽くせ! 陽気で皮肉屋な腹ペコおじさんフィルの珍道中

◆『腹ぺこフィルのグルメ旅』(2018年)

 「料理の醍醐味は、結局食べることに尽きるでしょ!」と思っている人には、この番組が一番楽しいはず。本作は、ひょろっとしたおしゃべりなおじさん・フィルが、世界各国の市場や屋台、レストランを巡って人々と交流しながら美味しいものをひたすら食べまくる番組です。

 いつも飄々としながら料理を頬張るのは、フィルことフィリップ・ローゼンタール。彼は、1996年からアメリカのCBSで放送され、無数のエミー賞にも輝いた傑作コメディ番組『HEY!レイモンド』の脚本で賞に輝いたこともある著名な脚本家でありTVプロデューサー。かなりの食通としても知られ、そのグルメぶりを番組に仕立てたのがこの作品というわけです。

 舞台となるのは、タイ、ポルトガル、イタリア、アメリカ、モロッコ、韓国とまさに世界中。美味いものがあればそこにフィルあり! と言わんばかりに縦横無尽な食い倒れ旅を披露してくれます。

 基本的に、フィルが現地のコーディネーターや料理評論家などに案内されて、その土地ごとの食材や、それらを生かした料理に舌鼓を打っていくのですが、特筆すべきはその食べっぷり。

 まるで、アメリカ版『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎かと思うほど、モリモリ食べていくのですが、五郎さん同様フィルもかなりの細身。「そんなに食べてなんで痩せているの!」と少し嫉妬してしまいそうです(笑)。

 そんな番組を盛り上げているのはフィルの性格でしょう。真面目な空気があると、そこにポンとジョークを投げ入れてくるフィルの皮肉屋気質はコメディ脚本家ならではです。相手が笑ってくれるまで自分は真顔を貫くというジョークの基本もしっかり押さえており、「このおじさんと旅したら楽しそうだなぁ」と思わせてくれます。

 異文化交流もこの番組の面白いポイント。記念すべき第1シーズンの1話目であるタイ・バンコク編では、先に紹介した『ストリート・グルメを求めて』でも登場した“タイの屋台女王”ことジェイ・ファイが登場しています。

 そんな伝説の料理人にもフィルは「デカイゴーグルがいいよね! まるで空でレッドバロンと戦うスヌーピーみたい」とジョークを飛ばすのですが、彼女の作る伝説のカニオムレツを頬張るや「あんな美味いもの、初めて食べた……」とうっとり。観ているこっちまで食欲が刺激される旅番組です。

◎あらすじ

『腹ぺこフィルのグルメ旅』

TVプロデューサーのフィルは大の料理好き。でも、もっぱらの専門は作ることじゃなく“食べること”。お腹を空かせたフィルは、アジアにヨーロッパにと世界中を駆け回り、まだ見ぬ絶品グルメを食べ尽くします!

2021.06.02(水)
文=TND幽介(A4studio)