ハグもキスもできないから シャカで伝えるアロハの心

 コックのヘンリーさんは、チキンをぐるぐると回しながら、道ゆく車に大きく手をあげて挨拶を欠かさない。

 ハワイを象徴するハンドサイン「シャカ」だ。友情、結束、感謝、親善、激励などを表すが、実は生みの親がいる。

 コーラル・キングダムから程近いライエという町にいた漁師ハマナ・カリリ。彼は製糖工場で3本の指を失う事故にあう。

 その後、ポリネシア・カルチャー・センターの前身となるフキラウショーで親指と薬指だけが残る手で挨拶を行う姿が地元住民や観光客の目にとまり、このサインがハワイのアロハスピリットを表すものとして世界中に広められることとなった。

 今では誰もが知っているが、シャカは「ありがとう」、「のんびり行こうよ」、どんな局面でもおおらかに受け入れることで生き抜いてきた小さな島の信念の現れなのだ。

 感染拡大防止のため、観光客受け入れには慎重だった政策が緩和されることに心配の声もある。

 しかし、観光を主産業とするハワイの生きていく道は、少しずつでも来てくれる観光客を受け入れ、もてなし、楽しんでもらうこと。

 11月初旬には日本からの観光客にも自主隔離免除プログラムが適用となった。

 「昔のハワイに戻ったみたいだと皆が言いますよ。車も少なく、近所の人がフリフリチキンを買いに来てくれる。でも最近は観光客が来てくれるようになって、やはり張り合いがあるし、嬉しい」とトーマスさん。

 観光客と共に歩んでいきたいから、テーブルにもシャカサイン。衛生面の協力を呼びかけハワイ語でKokuaとある。

 人がいないワイキキの映像とハワイ封鎖のニュースは衝撃だった。しかし、今のワイキキビーチの海は透明度がぐんと上がり、ローカルたちの憩いの場となっている。

 ビーチ最前列で唯一ずっと営業を続けるアウトリガー・ワイキキ・ビーチ・リゾートからの眺めは楽園そのもの。

 「この10年、毎日のように客室のラナイに出てビーチを上から眺めてきましたが、今ほど海の青さを近くに感じ、綺麗だと思ったことはないですね。魚の群れがくっきり見えたりしますよ」と、語るのは当ホテル営業マネージャーの田島さん。

 ワイキキビーチのみならず、ハナウマ湾では透明度が64パーセントも上昇し、大きな魚が湾内に戻ってきているという。

 日焼け止めに含まれる一部成分が珊瑚に有害なため、2021年より規制施行が決定しているが、それ以前に住民たちは今の海の美しさを保つ意識へと変わってきている。

 スーパーやサーフショップではリーフセーフと書かれた日焼け止め製品が多く並ぶようになった。

Text=Maya Kudo
Photographs=Akira Kumagai