オフィスやジムも完備の プライベート・クラブが 同じ屋根の下に
実は、モーティマー・ハウスは、地上階のレストランだけではありません。地下階、そしてファーストフロア(日本式の2階)からシックス・フロアまでメンバーだけが使える同系列のプライベート・クラブがあるのです。
バー、リビングルーム、ジム、ミーティング・ルーム、そしてオフィスと、仕事時間からプライベート時間までワンストップで快適な時間を過ごせる施設が揃っています。
「ロンドンは、世界中で一番プライベート・クラブが多い都市なんですよ。ビジネス系、エンタメ系など、ありとあらゆるタイプのクラブが存在しています」と、前述の創設者ガイ・イヴェシャさんは話します。
「私は長年ホテルの仕事をしてきたのですが、ホスピタリティ業界で働いていた人間の目線で見ると、どこもなにかが欠けていたんです。仕事環境として充実しているところは飲食に弱かったり、飲食に力を入れているところはビジネスの拠点としては使えなかったり。自分だったらほかにはないものを提供できるな、と思いました」
館内は、あるユニークな哲学に沿って、構成されています。
「アメリカの心理学者、アブラハム・マズローが提唱した自己実現理論が元になっています。マズローは人間の欲求にはピラミッドのような5段階がある、と説いています。
一番基本となる最下層は食欲など生理的な欲求です。続いて、安全を守られることへの欲求、友情や家族など、人とつながりたいという社会的な欲求、さらに承認されたいという欲求、最後に自己実現への欲求です。
モーティマー・ハウスでは、この自己実現理論を元に、地上階に食欲を満たすレストランを、そして上のほうの階には社交を楽しめる場所をと、より高いレベルの欲求を満たす場所を上階に配しています。
マズローは、実は自己実現のさらに上のレベルとして、自己実現を他者に伝播することを挙げていて、そんなコミュニティをつくれたらと思っています」とガイさんは語ります。
オリジナルの建築様式を生かした優美なアール・デコ朝の建物の各階は、異なる用途に合わせて美しく設えられています。
それぞれの人に合わせて何段階かのメンバーシップ・カテゴリーが用意されていて、登録人数に関しては非公開とのことですが、ウェイティングリストがあるほどの人気ぶりです。メンバーシップ・カテゴリーのなかには、出張や旅行の時にだけ利用したいという人のためのトラベラー枠もあるとのこと。
「広告は出さない主義で、主に口コミで人が集まってきますね。うちは入会にいたるプロセスもユニークで、書類選考だけではなく、必ずご本人にお会いしての選考となります。加えて、いま実はもう一軒、ソーホー地区にプライベート・クラブをオープンすべく準備中です。こちらは宿泊も可で2021年末にオープン予定なんですよ」とガイさん。
ネオ・バロック様式の建物を、オリジナルのよさを活かしつつ大型改装中とのことなので、こちらも来年のオープンに大注目です。
※こちらは7月末に取材し、8月にまとめた記事です。現在、モーティマー・ハウスでは、サロンやオフィス階も座れる座席に制限を設けたり、イベントの参加人数を縮小したり、新型コロナ・ウィルス感染予防対策を実施中です。今後の感染状況によって、営業時間が変わる可能性があります。
Mortimer House
所在地 37-41 Mortimer Street, London,W1T 3JH
電話番号 020-7139-4404
https://www.mortimerhouse.com/
安田和代(KRess Europe)
日本で編集プロダクション勤務の後、1995年からロンドン在住のライター編集者。日本の雑誌やウェブサイトを中心に、編集・執筆・翻訳・コーディネートに携わる。
●ロンドンでの小さなネタをつづったインスタグラム @gezkaz
●運営する編集プロダクションのウェブサイト http://www.kress-europe.com/
Column
かつて王都を誇ったロンドンは、いまだ偉大なパワーを持ち、魅力溢れる街。そう、この都会はいつまでも飽きることがありません。世界の中心から発信される素敵な情報を、現地からそのままお届けします!
文・撮影=安田和代(KRess Europe)