いまだ世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス。英国も大きな打撃を受けましたが、7月になってひとまず新しい日常「ニューノーマル」へと向けて、少しずつ経済活動が戻りつつあります。
イングランドでは、2020年7月4日(土)にようやくパブやレストランの再開が許され、これまで持ち帰りとデリバリーのみ行っていた多くの店舗が、ようやくそのドアを開けました。もちろん、いままでと同じようにはいかず、ソーシャルディスタンシングをはじめ、いくつかのガイドラインに沿っての営業再開です。
ロンドン随一のショッピング街、オックスフォード・ストリートからほど近い人気のレストラン、モーティマー・ハウス・キッチンも、満を持して7月4日に再オープンしたレストランのひとつ。ヘッドシェフを務めるのは、「レロ(Lello)」の愛称で知られるイタリア人シェフ、アントニオ・ファヴッツィさんです。
メニューの中心となるのは、常識の一段上をいくベジタリアン料理の数々。肉や魚料理もメニューには並んでいますが、野菜料理のバリエーションが目を引くベジセントリックなレストランです。
しっかりと焦がしたニンジンに、グリークヨーグルトと粉状にしたフェネルのドライフラワーを添えるなど、意外性のある調理法やスパイス使いで野菜本来の甘みや旨みを引き出しています。
今回、新たな取り組みとして、スタッフは全員、制服の一部としてマスクを着用。受付では訪れる人すべてが、ハンドジェルで手を消毒すると同時に、体温チェックを受けます。もちろん、ゲストは全員、名前と連絡先を知らせる必要あり。
メニューは、受付に提示されているQRコードを読み取って個人のスマホで見るか、または使い捨てのコピーで。
現在のところ政府からのガイダンスでは、2メートルのソーシャルディスタンシングが叶わない場合は、横並び、または背中合わせに座席を配置することとされていますが、モーティマー・ハウス・キッチンはもともと広々としたつくりなので、座席配置には大きな変化はなし。バーカウンターなど数カ所には、アクリル板が設置されていました。
さらに、店内はゲストもスタッフも完全に一方通行。床に貼られたステッカーを頼りに、一定の方向に歩くシステムです。
学校が休みになるこの時期は、ロンドンで働く多くの人が休暇を取る期間と重なり、また現在のところまだ観光客も少ない閑散期であることと、厨房の密を防ぐ目的もあり、現在は5割減のスタッフでまわしているとのこと。
「本格的にゲストが戻ってくるのは、9月中旬以降になるのではないかと思っています」と創設者のガイ・イヴェシャさんは話します。
文・撮影=安田和代(KRess Europe)