高級魚も雑魚と呼ばれる魚も
素直な目で見る

 「Nipponキュイジーヌ」で魚料理のフルコースを手がけるにあたって、浜田シェフは魚にこだわり、そのほとんどを焼津のサスエ前田魚店から仕入れている。こちらが取り扱う魚は、ほかとはどう違うのだろうか。

「サスエ前田魚店の前田尚毅さん自体が魚なんです(笑)。魚と会話ができる人ってなかなかいないんですけど、小さな違いも見逃さずにずっと魚と向き合ってきたことで、会話ができるようになった。僕には絶対に真似できないし、教わることが多いです。このダイニングでは陶芸家の青木良太さんの作品で料理をお出ししていますが、青木さんも土と対話ができる人です。そういう、特殊な技能を持った人と仲良くなることが多いですね」

 青木良太氏の作品を使うようになったきっかけを、浜田シェフは次のように振り返る。

「10年以上前でしたか、周りのレストランを見ると、フランスの三つ星レストランで使っている器です、みたいな話ばかりだったんです。でも、何か日本から発信したいと思っていて、だったら人間国宝のかたの器を使うのはどうかという考えもありました。でも人間国宝のかたは、次の世代には自分よりもっと先へ進んでほしいと願っているはずなんです。だから僕らの世代が新しくいいものを作って後世に残そう、と考えて青木君の器を使っています」

 浜田シェフの魚料理の特徴として、いわゆる高級魚以外の魚を食材として使っていることがあげられる。ここに至るには、とあるきっかけがあった。

「5、6年前だったかな、法隆寺専属の宮大工だった西岡常一さんの唯一の弟子、小川三夫棟梁にお話をうかがう機会がありました。法隆寺は約1400年前に建てたものを、直したり復元したりしているので、時代によって良かったり悪かったりする部分がある。そこで、法隆寺の再建で一番大事なことは何ですかとお尋ねすると、素直な目で見ることだとお答えになったんです。

 そのとき僕は、高級魚だとか雑魚だとか、人間が決めた価値で魚を判断していたことに気付きました。フラットな目で見ることで、北海道では庶民的な食材として知られているサメガレイや、あまり注目されないマグロのホホ肉がすごくおいしいことに改めて気付くことができた」

文=サトータケシ
撮影=白澤 正