食材が食材以上の料理になるのが
フレンチの技法

 星のや東京にうかがって気付くのは、外国人旅行者の割合も多いことだ。2020年の東京オリンピックに向けてさらに海外からの旅行客が増えると思われるけれど、それにあわせて料理を変えることは考えているのだろうか。

「料理に関しては、いままで通り淡々と進めていきたいと思っています。ただ、温暖化などの影響で漁獲高が減っているという現状があります。世界から見た時に、サステナブル・シーフードでは日本が遅れている面がある。日本がもっと世界に近づける動きができるといいなと思っています」

 サステナブル・シーフードを考えるにあたっては、先ほど話に出た、高級魚以外の魚を活用することが大事になってくる。

「獲った魚の35パーセントぐらいを海に捨てているという説もありますが、こういうことはあまり知られていません。雑魚と呼ばれるような魚でも、すり身にしてもいいし、スープにもできる。フレンチって、食材に足し算ができるんですね。その食材が食材以上の料理になるのがフレンチの技法です。僕らは旬じゃない高級魚よりも旬の雑魚のほうがおいしいことを知っているので、高級魚や雑魚というそもそもの概念から変えようと考えています。高級旅館のメインがあまり食べられていない魚だったらお泊まりになる方も驚くだろうし、価値がないとされていたものに価値を与えることができます。そういう提案ができる立場にいるんじゃないかと思っています」

 宿泊客においしい料理を提供することはもちろん、食文化を持続可能なものとして次世代に継承することも、浜田シェフは考えているのだ。

「鳥取県の境港の出身で、玄関開けたらすぐに海という環境で育ちました。父が釣りをするための船を持っていて、小さいころから魚に慣れ親しんでいるということは、僕がいま考えていることと関係しているかもしれません。Nipponキュイジーヌはやり続けることに意味があると思っていて、魚といえば日本だよね、と世界で認識してもらいたい。

 そうするにはお寿司だけではなく、フレンチとか中華とミックスして進化していくことも大事だと思います。フランスでも日本のラーメンや餃子が日本食の一つとして認識されています。Nipponキュイジーヌも継続して、そういうひとつのジャンルになると嬉しいと思っています」

 浜田シェフの料理は、おいしいということはもちろん、プレゼンテーションで目も楽しませてくれる。独創的な料理が次々と生まれてくる背景には、料理に対する真摯な姿勢と、料理の未来まで考える志の高さがあるのだ。

星のや東京

所在地 東京都千代田区大手町1-9-1
電話番号 0570-073-066(星のや総合予約)
客室 全84室
チェックイン 15:00
チェックアウト 12:00
料金 1泊1室 83,000円~(税・サービス料10パーセント別)
夕食 1名 18,000円(税・サービス料10パーセント別)
https://hoshinoya.com/

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文=サトータケシ
撮影=白澤 正