最後は思う存分ショッピング
そして何より、PITTI TASTEの素晴らしいのは、目と舌で確かめて、気に入った食材を最後に購入できるところ。プロのバイヤーのためだけではなく、広く一般市民に、しかも旅行者にまで、門戸が開かれているのである。楽しむための条件はただひとつ。美味しいものを食べることが大好き、ということだけ。
ショッピングゾーンには、ほぼすべてのブースから、代表的な商品がピックアップされて、並んでいる。だから、“これ”と思った好きだったものは、写真を撮るなりして、しっかり覚えておくこと。あとは、いざ購入。プロシュートが3ユーロ、オリーブオイルが8ユーロ、トリュフペーストが5ユーロとくれば、買わずにはいられない。少し落ち着いたテンションが、また、一気に上がってしまう。お財布と、というよりも、重量との勝負だ。全部ひとりで持てるかなあ……。そんな悩みもまた嬉しい。
街全体がPITTI TASTEに
さらに、PITTI TASTEの面白さは、会場内にとどまらない。フィレンツェの街全体がこのイベントとコラボしていて、街角のさまざまなスペースで美食が体験できるのだ。
例えば、昨年オープンしたグッチミュージアムの一角では中国茶のデモンストレーションを、ミシュラン一ツ星の気鋭のレストラン「オラダリア」ではトリュフの特別ディナーが。人気のパニーニ屋さん「’ino」では新作を頬張り、ホテルのラウンジではオリーブオイルのテイスティング、またPIAZZA(広場)や美術館でのカクテルパーティなど、フリーテイスティングから予約のディナーまで、素敵な催しは数え上げればきりがない。
それらは、PITTI TASTEのパンフレットとともに配られる、詳細な地図つきのプログラムにすべて記されている。目印はUOVO(イタリア語で卵の意味)。なにしろ、フィレンツェは徒歩で回れる、旅行者に優しい街。地図を片手にドアに貼ってある可愛い卵の絵を探しながら歩きまわってみるのも愉快だ。
小松宏子
フードライター。聖心女子大学卒業後、広告代理店勤務を経て、フリーランスライターとして独立。日本はもちろん、世界各国の食事情の取材に飛び回る。近刊に『上野万梨子のパンを楽しむレシピノート』(イースト・プレス)