豊かな実りの秋を迎え、これからさらに美味しいものがいっぱいになる北海道。なかでも、小樽、ニセコ、積丹をはじめとした後志(しりべし)エリアは、食欲の秋を満たすのに最高! この地にゆったり滞在して、とびきりの美味を味わい尽くそう。

【WINE】
日本ワインの新時代を
切り開く気鋭のワイナリー

小樽から車で約30分。のどかなぶどう畑が広がっている余市のなだらかな丘陵地帯で、この土地の恵みからなる本物のワイン造りに取り組んでいる「オチガビ」。ワイナリーにはレストランも併設し、赤、白、スパークリングに合わせて供される、後志の食材を巧みにちりばめたフランス料理が評判だ。

 四季折々、いつ訪れても多彩な食材の豊かな味わいで旅人を満足させてくれる北海道。秋色が深くなるとともに到来するぶどうの収穫シーズンは、ワイン好きにとって心躍るときだ。

 近年、飛躍的にクオリティが向上し、大いに注目を集めている日本のワイン。その進化を牽引する産地のひとつが後志だ。強い志をもった生産者たちが、さらなる高みを目指している。

美しくライトアップされた小樽運河。

 古きよき風情が残る小樽の街角に、2015年に誕生した「オサ ワイナリー」は、“幸せのワイン”をテーマにしている話題のアーバンワイナリー。小樽近郊が原産といわれる北海道固有のぶどう品種“旅路”を使い、寿司とのマリアージュを追求した「tabi」など、日本ワインでしか実現できない可憐な香りと味わいが魅力だ。

 また、余市にある「オチガビ」は、新潟の人気ワイナリー「カーブ・ドッチ」で名を馳せた醸造家、落 希一郎氏が“美しいワイン造り”のために立ち上げた新天地。ぶどう畑に囲まれた爽快なランドスケープから、レストランで提供される料理の一皿一皿まで、すべてが独自の美意識で貫かれた、理想の場所を目指している。

 「夢のあるモノづくりがしたい。希望のもてるモノづくりを残したい」と語る落氏。かねてより力説してきた原産地呼称管理制度が2018年10月から日本でもスタートする。フランスのボルドー、ブルゴーニュなどと同様に、これからは余市のぶどうで造られたワインのみが余市産ワインとなるのだ。

 北海道の豊饒なテロワールから生み出される日本ワインの新たな時代。その息吹を感じに出かけてみたい。

●後志エリアへのアクセス
後志の最大都市・小樽へは、札幌から列車で最短32分。エリア内の各地へはバスが運行するほか、倶知安、ニセコへは列車も利用可。レンタカーも充実している。

撮影=杉山節夫、福知彰子
構成・文=矢野詔次郎
地図作成=シーマップ
協力=北海道観光振興機構