水の流れを辿って長井の蔵屋敷をめぐる
まちのマップを見ていて気づくのは、宮地区と小出地区が左右対称になっていることだ。それぞれの地区に、いくつもの蔵をもつ大店があり、味噌や醤油、酒の蔵元があり、神社がある。
さらに、宮には100年以上の歴史をもつ「あやめ公園」があり、小出には3000株以上の白つつじが咲き誇る「白つつじ公園」がある。長井駅から最上川へ真っすぐに延びる道を中心線として、まちを二つに折りたたむと、重なり合う印象だ。宮と小出、二つの舟着場を核に、商店や問屋が集まり、競い合うようにまちが大きくなっていく様子が目に浮かぶ。
右:やませ蔵美術館の庭園を流れる水路。水音に耳を傾けながら散策してみたい。
かつての長井の繁栄は、まちのそこここで見受けられる。小出のあら町通りには、江戸の昔から続く商家が残っている。元禄年間の創業で、長井でも指折りの豪商だった紬問屋「山清」。その敷地内にある10棟の蔵のうち5棟の蔵を開放して当主が蒐集してきた屏風や絵画、陶器を展示、「やませ蔵美術館」として公開している。そのなかには最上川舟運によって京や大阪から運ばれてきた工芸品も数多くある。最上川は塩や茶、木綿といった生活物資を運んできただけではない。上方の文化や芸術も川を遡ってきたのだ。
その隣にあるのが、寛政元年創業の山一醤油店。国の有形文化財となっている仕込み場では今日も作業が続いている。ご飯のお供「あけがらし」は雑誌等でたびたび紹介されている人気商品だ。さらにその並びには旧丸中横仲商店の土蔵群がある。江戸時代に建てられた「江戸蔵」、明治初期に建てられた「砂糖蔵」や「質蔵」が広い敷地に並ぶ。蔵の空間を生かしてジャズライブなどの演奏会も行われている。
Photo=Keiji Ishikawa、Yuki Funayama、Nagai City