翌朝、ゴミ箱のビニール袋から見つけたものは…

 青白い月明かりの中で呆然としていると、扉の向こうからパタパタと駆けてくる音が近づいてきました。

 ガラリ。

「大きな音がしたけど、どうかされました?」

 いつもの若い看護師の女性が扉を開けていました。

「いや……ああ、別に大丈夫です。すみません」

「そうですか。えっと、じゃあ、おやすみなさい」

「はい」

◆◆◆

 翌朝。

 早くに目覚めてしまったAさんが、妻が迎えにくるまでに退院の準備をそそくさと進めていると、夜勤明けのあの看護師の女性と目が合いました。

「Aさん、今日で退院ですね~」

「ええ、おかげさまで」

 なんだか浮かないAさんの表情に、看護師の女性は気がつきました。

「どうかされました?」

「あの……昨日の夜、何か大きな音が聞こえたりしましたか?」

「え? うーん、あ、そうそう、しましたよ。だから少し見に来たんです」

『じゃあ、掃いたの、ここに入れちゃいますね』

 突然、全身の毛が総毛立つのを感じて、Aさんは体を捻ってベッド脇のゴミ箱を見ました。

「ど、どうされたんですか?」

 駆け寄る看護師さんの言葉をよそに、Aさんの視線はゴミ箱の中に釘付けになっていました。

「……なんですか、この長い爪」

 くしゃくしゃのビニール袋の中。

 Aさんが丸めていた数枚のティッシュの上に、黄ばんだ灰色をした10センチはあろうかという異様に長い爪が、10本ほど捨てられていました。

 その後、Aさんは無事に退院して今も元気に職場で働いているそうですが、入院前よりも口ごもることが増え、事あるごとに激しく汗をかくようになり、寝る前に必ずベッドの下を確認するという奇妙な癖が抜けなくなってしまったのだそうです。

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