別れた人のSNSを見続けてしまう

――では、今までの辛かった失恋を思い出していただいて、その時の自分自身に渡してあげたいカルタを1枚選んでいただけますか。

たなか まさに自分だなと思うのは、「飲んで本音言ったら全部終わった」。絵もそのまま、その時の自分の髪型で描いたんですけど、普段から(ストレスを)溜めないだとか、飲んだら電話しないとか大事ですよね。このカルタを待ち受けにしようかなと思うくらい、自分に当てはまります。

又吉 僕は「平然と明日を生きようとするあなたが眩しい」ですかね。なんとなく失恋を引きずってる自分というか。僕も別れた人とか振られた人のSNSを見て、よく一緒に飲む後輩に「気持ち悪いからやめた方がいいですよ」って注意されるんですけど、「いや、俺はこの感情がなくなるまで見続ける」と言ってしまって(笑)。

たなか 追い込むタイプなんですね(笑)。

又吉 そうなんです。そういうものを見た時……いや、わからないですよ? 本当はどうなのか。でも、めっちゃ元気やったり、知らん友達とおる姿を見ると、喰らうんですよね。

思い出深い「失恋」のエピソードは?

――お二人は、これまでどんな時に「恋の終わり」を感じましたか?

又吉 久しぶりに会う約束をして、お寿司が食べたいと言われたので一緒に行ったら、「さっきまで友達の家にいて、3人でやってたゲームを中断してきたから、食べ終わったら戻らないといけない」と言われた時ですね。これは完全に終わったなと悟りました。「あぁ、そうなんや。全然大丈夫やで」と返しましたけど、内心は「ゲームをやりに戻るって優先順位どうなってんねん」って。

――お寿司は相手のリクエストだったのに。

又吉 まぁそれはいいんですけどね。毎日会っているような関係であればわかるんですけど、久々に会ってそれだったんで。恨んではいないですけど、パッと浮かんだのはそのエピソードでした。

たなか 私は……自分の誕生日のことですかね。一緒に暮らして2年くらいの時。すごく忙しい彼で、何もしなくていいよと言ってたんですけど、祝ってくれると言うから「私の好きなチューハイをコンビニでありったけ買ってきてほしい」と、ささやかな要望を伝えたんです。これ、かわいいじゃないですか。

又吉 かわいいですね。

たなか そうしたら、彼が買ってきたのが2本だったんです。ありったけが2本かぁって。

又吉 少ないなぁ(笑)。僕やったら、コンビニ2、3軒は回ってみますけどね。

たなか 悲しくなって、その日のうちに別れ話をしました。

又吉 その銘柄にこだわっていたわけじゃないんですよね? 他のものでもよかった。

たなか そうです。私のことを考える時間を作ってほしかったんですけど、期待してしまった自分自身が嫌になったというのもあります。ちっちゃいことなのに……そんな大したお願いじゃないのになと思ってしまって。

又吉 「好きなチューハイをコンビニで」って、いいアシストですけどね。彼氏としては食事する店とかプレゼントとか考えなあかんけど、時間がなくて用意できひんかった。どうしようっていう時の、最高のアシスト。うわぁ、ありがとうって思いますけどね……2本?(笑)

たなか はい。祝われる側なのに、結構気を使って考えたんですけどね。

後篇「『俺の痛覚はおかしくなってたんやな』後輩の指摘にゾッとし…又吉直樹が度重なる失恋で学んだ『モテる』ことの“残酷”な本質とは」を読む

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又吉直樹(またよし・なおき)

1980年、⼤阪府寝屋川市⽣まれ。2003年に綾部祐⼆と『ピース』を結成。2015年に⼩説デビュー作『⽕花』で第153回芥川賞を受賞。著書に『劇場』『⼈間』『⽣きとるわ』などがある。

たなかみさき

1992年⽣まれ。⽣活や⼈物を⾵通し良く描くイラストレーター。著書に、作品集『ずっと⼀緒にいられない』『あ~ん スケベスケベスケベ!!』(ともにPARCO出版)、コミック『⼤なり⼩なり』(⽂藝春秋)がある。

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