映画『君は映画』が、6月19日(金)より全国上映する。『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)や『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)などの映画作品で脚本を手がけた、ヨーロッパ企画主催の劇作家、上田誠氏が『ドロステのはてで僕ら』(2020年)『リバー、流れないでよ』(2023年)に続いて、下北沢の映画館・トリウッドと共作した本作で初監督を務めた。

 W主演を務めたのが、伊藤万理華さんと井之脇海さん。本作は、伊藤さん演じる劇作家のマドカと、井之脇さん演じるインディーズミュージシャンのカズマがそれぞれ映画を見に行ったところ、スクリーンに互いが映し出されて始まる。互いの日常を映画として見、対話しながら、直面するアクシデントを乗り越えていくストーリーだ。

 上田氏らしいSF的発想とユーモアがちりばめられた本作は、どのように生まれたのか。両者ともに30歳を迎えた、W主演のふたりに話を聞いた。すると、芝居の領域にとどまらない、作り手としての姿勢が垣間見えた。


伊藤さん:「劇的に、というより切実に。」監督の思いを代弁する劇作家という役柄

――おふたりは、上田監督が脚本・演出を務めた2025年の舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』(以下、『リプリー』)で共演しています。今作『君は映画』への出演は、どのような流れで決まりましたか?

伊藤 『リプリー』の公演期間中に上田さんが映画を撮られると小耳にはさみ、その後、正式にオファーをいただきました。ヨーロッパ企画とトリウッドが手を組んだ過去2作は私も拝見していて、その第3弾であり上田さんの初監督作品ということで、二つ返事でお受けしました。

 ちょうど、上田さんの描かれる世界観にアプローチできていたタイミングでしたし、私も以前から実験的な映像作品に携わりたいと思っていました。過去2作の“映画の画”の使い方をしている点も好きでした。

井之脇 僕も同じようなタイミングでした。『リプリー』の公演期間中、上田さんとも仲が深まり、上田さんの作るものが好きだと感じていました。でも、僕は先に“上田さんが万理華ちゃんと映画を撮るらしい”と聞いていて、 『リプリー』全公演終了後に正式にオファーをいただきました。“僕は関われないのかも”と思っていたので、喜びもひとしおでした。

――今回、伊藤さんは劇作家のマドカを演じました。役柄にはどのようにアプローチしましたか?

伊藤 マドカは、小さなカフェを会場にして劇を作っている劇作家ですが、大きな舞台に劇団のメンバーを連れて行くことを夢見ている。上田さんの分身のような人物なのかなと思っています。

 上田さんは、人とある程度の距離感を保っているように見えます。熱く語り合ったり、まっすぐに愛情を伝えたりするより、黙々とひとりで作業をしている。マドカのセリフには、上田さんのメンバーに言えない本音や演劇への愛が込められていると感じたので、その想いを届けたいという使命感がありました。劇的に、というよりは、しっかりと切実に伝えることを考えていたような気がします。

――お芝居の中で具体的に意識したことは?

伊藤 前作で上田さんが、何かを目撃して驚いた瞬間の表情や動きを“戸惑い”と繰り返し表現されていたのが印象的で、その繊細な揺らぎを今作でも意識しました。ただ、現実ではあり得ない構造を前提とした作品なので、起こる出来事に対してどこまで受け入れた芝居をすればよいのか、その塩梅には悩みました。

 「受け入れ早!」と観ていただけるテンポ感でもこの作品らしいですし、答えはないのですが、私としては落とし所に納得したかったので、上田さんに相談して。LINEで長文の質問をしたこともありましたが、同じだけの文章を返してくださりました。

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