北九州に住む書店員である語り手のかぁなっきさんと、聞き手であり映画ライターの加藤よしきさんのコンビが、独自に収集した実話怪談を紹介するチャンネル「禍話(まがばなし)」。生配信サービス「TwitCasting」で2016年から放送がスタートしたこの番組は、漫画やドラマ化されるなど、今、ホラーファンから熱狂的な支持を得ています。

 今回はそんな禍話から、お正月の初詣にまつわる、奇怪で空恐ろしいお話をご紹介します――。

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忘れられない大晦日

 1990年代の年末。スマホはおろか、携帯電話ですらあまり浸透していなかった時代のお話です。

 当時大学2年生だったOさんは、お酒も飲めるようになって初めてとなる“大学生活で迎える年越し”に浮かれていました。窮屈に感じていた実家暮らしとは別れを告げ、学生寮ではありましたがついに自由な環境で年越しを迎えられる、そんな高揚感があったのです。

 おっかなびっくり入った写真部のメンバーとはすぐに仲良くなり、生活資金のためと貯めていたバイト代のほとんども、安い一眼レフカメラの購入資金に消えていました。

 そして来たる大晦日。

 誰が言い出すでもなくOさんの家に集まったのは、サークル仲間の間でもとりわけ仲の良かったTさんとKさん、そしてKさんの彼女であるMさんの3人。

 外で粉雪がちらつく中、小さなコタツに身を寄せて缶ビールを開けながら、これまた小さなテレビデオで紅白を垂れ流していると、軽やかなシンセサウンドのウィンターソングの間奏にTさんがこう切り出しました。

「なあ、どうせヒマだし、ドライブでも行かないか」

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