息子ルカさんが語る、母オードリー

バッド・フレイカー撮影による『麗しのサブリナ』の広報用写真(1954年)。 (C)Paramount Pictures

 オードリー・ヘップバーンには、最初の夫、俳優のメル・ファーラーとの間に長男ショーンさん、そして2番目の夫で精神科医のアンドレア・ドッティの間に次男ルカさんと、ふたりの息子がいます。オープニング前日のプレスビューには、ルカさんがローマから駆けつけ、報道陣の前でスピーチをするとともに、質疑応答にも答えました。

 「もしも母がこの場にいたら、こんなにたくさんの人が集まってくれたことに、きっとびっくりしたことでしょう」とルカさん。「母は生涯を通じて、自分にどうしてこれほどのファンがいるのかを、あまりよく理解できないようでした」と話します。

プレスビューでスピーチするルカさん。

 ルカさんのお気に入りの一点は? という質問には、「その日の気分によって変わるのですが、今の気分で選ぶなら、『ジジ』の衣装を着たカラー写真です。当時の写真は圧倒的にモノクロが多いのに、カラーというのが珍しいですよね」と、今回英国で初公開されたピンクの衣装に身を包んだオードリーの写真を挙げました。

一番お気に入りの作品は?と聞かれたルカさんが、「今日の気分で選ぶなら」とセレクトしたのが、写真中央の『ジジ』のコスチュームに身を包んだオードリー。
1955年6月、「戦争と平和」撮影中の一枚。ジバンシィのドレスに身を包んだオードリーをノーマン・パーキンソンが撮影。(C) Norman Parkinson Ltd/Courtesy Norman Parkinson Archive

 続いて、「もしも母にとって一番大切な写真を選ぶなら」と挙げたのが、フランス人作家シドニー゠ガブリエル・コレットとのツーショット写真です。コレットといえば、映画『モンテカルロへ行こう』の撮影中だった若きオードリーを一目見て、「私のジジを見つけたわ」と自身の次回作の主役に抜擢したエピソードが広く知られています。このツーショット写真は、オードリー自身が自宅に飾っていた数少ない写真のひとつで、「この女性が私のキャリアのきっかけをつくってくれたのよ」と幼いルカさんによく話していたのだそうです。

次男のルカさんが「母にとっておそらく一番大切な一点」と語った、フランス人作家コレットとのツーショット。オードリーが自宅に飾っていた写真で、幼いルカさんに「この女性がお母さんのキャリアのきっかけをつくったのよ」と語っていた。
アフリカの「尼僧物語」のロケ地にて。1958年、レオ・フックが撮影。(C)Leo Fuchs

 今回、パーソナル・コレクションからは35点を提供しているとのことですが、アーカイブにある写真は5000点を超えるとルカさんは話します。「母だけではないですが、彼女のファミリーは第二次世界大戦によってほとんどすべての写真を失っています。だからこそ母にとっては、おそらくスナップ写真から雑誌の切り抜きまで、すべてがとても大切なものだったようです」

 セシル・ビートン、リチャード・アヴェドン、テリー・オニール、アンガス・マクビーンなど、20世紀を代表するそうそうたるフォトグラファーによる魅力溢れるポートレートの数々と同時に、名女優のパーソナルな素顔も垣間見られるエキシビション。2015年10月18日まで開催されていますので、この夏、ロンドンにご旅行の方にはおすすめです。

セシル・ビートンが1960年1月にローマのホテル・ハスラーにて撮影したポートレート。 (C)The Cecil Beaton Studio Archive at Sotheby's

『Audrey Hepburn: Portraits of an Icon』
会場 National Portrait Gallery
所在地 St Martin’s Place, London WC2H 0HE
電話番号 +44-020-7306-0055
開館時間 10:00~18:00(木・金曜 ~21:00)
料金 スタンダードチケット 9.00ポンド
URL http://www.npg.org.uk/whatson/hepburn/home.php

安田和代(KRess Europe)
日本で編集プロダクション勤務の後、1995年からロンドン在住のライター編集者。日本の雑誌やウェブサイトを中心に、編集・執筆・翻訳・コーディネートに携わる。
ロンドンでの小さなネタをつづったフェイスブック www.facebook.com/kresseuropelimited
運営する編集プロダクションのウェブサイト www.kress-europe.com
 

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文・撮影=安田和代(KRess Europe)