ところで、この島は、現在も絶賛活動中の火山の島。おかげさまで、島のあちこちに湧き出る温泉を楽しむことができる。溶岩が固まった黒い岩場に温泉が湧く「カーラ・ガディールCala Gadir」や、蒸気が噴き出す天然の洞窟サウナ「グロッタ・ディ・バンニョ・アシュッタ Grotta di Bagno Asciutta」。そして、ホメーロスの叙情詩「オデュッセイア」の主人公オデュッセウスが、海の女神カリュプソーと密会をしたという伝説が残る「グロッタ・ディ・サターリアGrotta di Satalia」などなど。海に直結した温泉は、海水と混ざってややぬるめながら、本格的な治療のつもりで訪れるご年配のシニョーリ・シニョーレもいて、じっくり浸かりながら、効用について語り合ったり、熱めのお湯が出るエリアを譲り合ったりするムードは、地中海といえども日本のそれとなんだか似ていて、温泉には、世界共通の「和ませ力」があるのかと感慨深く、そしてとても和む。(ちなみにこれらの温泉の泉質による効用は定かではない。一般的なイタリア人は適当なのである)。
しかし、温泉好きの日本人としては、和むばかりでは満足できない。何か明確な効用が欲しくなるのも人情だ。そんな向きに、ひときわ魅力的なのは、「ラーゴ・ディ・スペッキオ・ディ・ヴェーネレLago di specchio di Venere」、「ヴィーナスの鏡の湖」という美しい名前の付いた湖。キラキラ透明な湖は、お肌に良さそうな硫黄泉。その上、この温泉の底は、全部…ファ、ファンゴ(温泉成分たっぷりの泥)なのだ! しかも、これ、アルマーニ・スパでも御用達にされているという。ミネラルたっぷりの良質のファンゴを全身に塗りたくり、地中海の太陽で乾かせば、ゾウのようにゴワゴワの灰色肌になるが、温泉で洗い流せば、そこには、つやつやの肌が顔を出す。Viva ファンゴ!
アフリカが見える遥かなる地中海に浮かぶ島……、しかし伊豆並みに温泉三昧&スパができるなんて、イタリア人にばかり行かせておくのはいかにも惜しい。イタリア好きで、しかも温泉好きな日本女子なら、もれなく楽しめる魅惑の島。次のバカンスでぜひ!
アクセス:
ローマ→(飛行機)1時間→シチリアの州都・パレルモ→(飛行機)1時間→パンテレリア空港。
島内の移動はレンタカーが便利。
岩田デノーラ砂和子
2001年よりイタリア在住。編集ライター・コーディネーター。2010年より、首都ローマから、念願のシチリア島へ拠点を移す。最近の人生テーマは、「知られざるシチリアの魅力ディスカバリー」。ほぼ毎日更新のブログ「ローマの平日シチリア便り」が人気。著書に「トラットリアのイタリア語」「お買いもののイタリア語」など。
text:Sawako Iwata