シチリアとアフリカの間の地中海に浮かぶパンテレリア島。日本では、まだ知る人ぞ知るイタリアのスーパー穴場スポットだが、ここイタリアでは、この島をこよなく愛するアルマーニ氏の別荘がある島としても知られ、アルマニスタ(アルマーニ好きな人)はもちろん、イタリア人の誰もが憧れるヴァカンス島だ。この夏、アルマニスタにまぎれて、憧れの島へ上陸した!

パンテレリア島の港に停泊するアルマーニ氏のプライベート船

 パンテレリア島は、シチリアの南側、アフリカまでわずか70キロの地中海にあり、晴れた日には、水平線の彼方にチュニジアがうっすらと見えるほど、アフリカが近い。紀元前700年頃、古代カルタゴ人の上陸から始まった島の長い歴史には、フェニキア、古代ローマ…と近隣地中海諸国が名を連ねるが、中でも、アラブ人による支配の影響は色濃く、今でも地名や建物に、その名残が見られる。島名の「パンテレリア」も、アラブ語「Bent el Riahベン・エ・リー(風の子供)」が語源だ。島内に点在する、屋根がドーム状になった風変わりな石積みの家屋も、「ダムーゾ」と呼ばれるアラブ式の伝統的な建物で、パンテレリア島では、このダムーゾを改築したり模したりして別荘にするのが、長い間流行している。多分、火付け役はアルマーニ氏。彼の別荘も、そんなダムーゾのひとつで、ヨーロッパ発のファッション誌やインテリア誌によく登場する。

伝統的なダムーゾを改築した別荘。手前に見えるのは島名産のカッペリ(ケッパー)とサボテン風のインドいちじく

 周囲にさえぎるものが何もない島には、その名前の通り、1年中あらゆる方向から風が吹くことでも有名だ。ここで栽培されるオリーブは、風を避けて上より横に枝を伸ばし、土着品種のブドウ(ジビッボ)は、成木でも大人のひざ丈程の高さ。名産カッペリ(ケッパー)は、大地にへばりついたまま成長する。奇妙な植物たちとダムーゾが織りなす独特な景観は、世界に唯一無二。世界遺産にならないのが不思議なくらいだ。

text:Sawako Iwata