「俺がお前に何か言うとしたら、『もういいから』だ。昨日の夜、ドアを蹴って俺を叩いたことを覚えていないと言うならさ」
「ごめんって言ったじゃない」
「俺が(バスルームの中で)かがんでいる時に、お前がドアを蹴って、俺の頭にぶつけたことを忘れたと」
「悪かったって言ったわ」
「待てよ。自分がやったことを覚えて……」
「(ジョニーの言葉を遮って)私は動揺していたのよ。いろんなことがあって。アンビエン(睡眠導入薬)も飲んでいたし。私があんたと同じことを覚えていないからって、何をそんなに怒っているのよ。ごめんって言ったでしょ。否定はしてないでしょ」
「俺は指を失くしたんだぞ」
2016年7月、サンフランシスコで密会した時の会話もあった。
「アンバー、俺は指を失くしたんだぞ。わかっているだろう? 鼻に缶を投げつけられもしたんだぞ」
「あれはフェアな喧嘩だったと言って、陪審員や判事がどう思うか見てみましょうよ。ジョニー、世界に向けて言いなさいよ。『男である私、ジョニー・デップも、DV(音声では略さずにドメスティック・バイオレンスと発言)の被害者です。あれはフェアな喧嘩でした』と彼らに言ってみなさいよ。どれだけの人があなたの味方をすると思う?」
「『ジョニー、世界に向けて言いなさいよ。男である私、ジョニー・デップも、DVの被害者です』とハード氏に言われた時、あなたは、なんと答えましたか?」
と聞いた。ジョニーははっきり述べた。
「私は『はい』と答えました。そう(DVの被害者)です」
ジョニーが「自分はDV被害者だ」と明確に宣言したことは、その日のテレビ各局の報道で大きく取り上げられた。間違いなく、この長い裁判の重要な瞬間のひとつだ。この音声が再生されている間、アンバーは俯き、唇を噛んでいた。
マイヤーズはまた、アンバーが「ワシントン・ポスト」に寄稿した意見記事のせいで何を失ったのかをジョニーに訊いた。それに対し、ジョニーは、「すべてです」と答えた。
「50代にして突然、私が『酔っ払ったり、コカインを使ったりして、女性を殴る男なのだ』という主張が、世界を駆け巡ったのです。もう終わりです。この裁判でどんな判決が出ようとも、あの(ジョニーが暴力を振るったという)主張が最初になされた時に、私は(すべてを)失ったのです。そのような話を、人々は忘れません。私はずっとそれを背負わなければいけないのです。判決がどうであれ、誰もが知る出来事だったから。そんなことが起こる必要はなかったのに」

ジョニー・デップの戦い DV疑惑の真実と復活への道
2026年10月22日
定価 2,750円(税込)
文藝春秋
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