ほかの見どころでもある、レンブラントの実験的名作
同展では、マウリッツハイス美術館が所蔵するフェルメール作品3点のうち2点が来日するほか、17世紀のオランダ絵画10点が展示され、うち4点は日本初公開作品となる。
世界貿易により経済発展が進んだ17世紀のオランダは、美術においても黄金時代を迎えた。そんなオランダが生んだ豊かな作品の数々を、同展では「歴史画」「肖像画・トローニー」「風俗画」「静物画」「教会内景画」「風景画」の6つのテーマに分けて紹介している。
今年生誕420周年を迎えるレンブラント・ファン・レインの《笑う男》も注目作品のひとつだ。
《笑う男》はフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》と同様に、不特定の人物の表情を描いた「トローニー」である。しわの寄った目尻、歯を見せて笑う口元など、表情豊かな男の姿が描かれる。縦15.3cm×横12.2cmと小型なものの、この絵ハガキほどのサイズのなかで、ブラッシュ・ストロークや荒々しい筆触で如何にこの表情をとらえるかという、一種の実験が繰り広げられている。若きレンブラントの試みが凝縮されている作品だ。
「フェルメールと対照的」な作品
見どころ作品は、フェルメール、レンブラントなど日本に馴染みのある画家の作品だけではない。同展の日本側監修者である美術史家・宮下規久朗教授(神戸大学大学院人文学研究科)に、特に注目すべき作品3点を教えてもらった。
1点目は、ヤン・ステーンの《老いが歌えば若きが笛吹く》(1663~1665年頃)だ。
「タイトルの意味は、『大人のやることを子どもは何でも真似する』。つまり、大人が良いことをやれば子どもも良いことをしますし、悪いことをすれば悪いことをするという、“大人は子の模範たれ”という教訓的なテーマが込められています」
「笛を吹く」(pipe)という語には「パイプ(喫煙具)」という意味もあり、同作品には縦笛、バグパイプ、火吹き棒、喫煙用パイプなど、「pipe」に関連するモチーフが随所に散りばめられている。
「中央でパイプをくゆらせている男は、画家の自画像です。フェルメールが会話が交わされていないような静謐な作品を描くのに対して、ヤン・ステーンはごちゃごちゃした賑やかな家庭を描くことが特徴。批判的な文脈で使用されるものの、英語で“散らかった騒がしい家庭”を指す『A Jan Steen household』といった言葉もあるぐらい、非常に高名な画家です。このような賑やかな風俗画を描かせたら、右に出る者はいないほどです」
