#315 Carmel by the Sea
カーメル・バイ・ザ・シー(米国・西海岸)
![街に入った途端、童話の世界に迷い込んだような気分になるカーメル・バイ・ザ・シー。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/1280wm/img_ab4dd9c8c4a51d76581a217bd094c0e312406383.jpg)
5年前、シエラネバダ山脈の麓から海へ向かう道はカラカラに乾いていました。見るものすべてがまるで火星のようなサンドベージュ。そして今回ご紹介するカーメル・バイ・ザ・シーの街に入った途端、がらりと景色が変わりました。街路樹の木漏れ日の中にまるで童話のように愛らしく、美しい街が目の前に広がりました。
![週末の午前中、地元の生産者が集うファーマーズ・マーケット。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/1/1280wm/img_d17f1ec7cd9225f7f2454ec927273afb9554863.jpg)
![ファーマーズ・マーケットにはオーガニックな食材や切り花が並んでいます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/8/1280wm/img_e857fedb64fb21f3bbe8da32db0f633f8862210.jpg)
カーメル・バイ・ザ・シーはカリフォルニア、モントレー半島の南に位置する太平洋に面した小さな街です。サンフランシスコの南約190キロ、ロサンゼルスの北約530キロ。通称カーメルと呼ばれるその街は、いわゆる“カリフォルニア”のイメージとは少し違うかもしれません。
かつてはジャガイモ畑以外何もなかったというこの地。それが20世紀に移り変わろうとする頃、カーメルを開発していた会社が100本のサイプレスの木を植林したのが、そもそもの始まり。
そして1906年に起きたサンフランシスコ地震によって、モントレー半島北部のセンターランドに暮らしていた作家たちがカーメル・バイ・ザ・シーに避難してきました。そうした作家の中にはジョージ・スターリングやジャック・ロンドンといった顔ぶれも。サンフランシスコの新聞にも「芸術家や詩人が集まる街」として、紹介されました。その後もアーティストたちが集まってきたようです。
![街中にあるハリソン・メモリアル図書館。暮らしに木がある生活のようです。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/1280wm/img_abfc294bab67bad73ecbdd0de69ba64c8086547.jpg)
そして童話のような街並みが形成されたきっかけは、建築家でも大工でもない若者ヒュー・コムストックが妻のために建てたコテージでした。彼の妻の手作りの“オッツィ・トッツィ”人形コレクションを収容するためのコテージが、実にユニークだったのです。
2024.12.14(土)
文・撮影=古関千恵子