また、密着を受けた「情熱大陸」では「“遅咲き”って最近よく言って頂けるんですけど…私、咲けてます?」と謙虚に笑う姿が印象的でした。いるだけで現場が明るくなり、カラッとしながらもさりげなく気遣いをする様にも、業界人がオファーしたくなる理由を垣間見たような気がします。
同番組ではこれまでの苦労も語られていましたが、遅咲きなんてことは決してありません。凛としたままずっと咲き続けていた花が、やっと世間に“バレた”だけのことなのです。
フジテレビ系初主演は然るべき帰還
「西園寺さんは家事をしない」に続き、2クール連続で主演に挑む作品が木曜劇場「わたしの宝物」。ブレイクのきっかけとなった「やんごとなき一族」も同枠だったので、錦を衣て郷に還る形となりました。
本作は、夫以外の男性との子どもを、夫との子と偽って産んで育てる「托卵(たくらん)」を題材にした物語。作品のテイスト的に、きっと西園寺さんのときに私たちを釘付けにしていた大立ち回りとは180度違う演技が要求されます。
番組宣伝ではセンセーショナルさを強調して“タブーを描く”“悪女役”という宣伝文句が使われていますが、「昼顔」「あなたがしてくれなくても」の系譜を受け継ぐ作品であるならば、わかりやすい破壊力抜群の悪女の物語ではなく、主人公の感情を繊細なタッチで描く作品であることは間違いありません。
松本演じる主人公の神崎美羽は、大企業でバリバリ働き、妊活のために仕事を辞めて家庭に入った女性。理想的な夫婦と周りには見えているけれど、お互いが抱えているストレスや日常の不満で家庭内ですれ違っていく役どころです。そこからの展開は単純なラブストーリー軸ではなく、身近に潜む人間の業や欲といったものを感じさせるものになっていくことでしょう。
ただキラキラとしていればいいのではなく、悲哀や内なる感情を豊かに表現することが求められる役だと思います。しかしこれまでの作品で魅せてくれた、深読みしてしまうミステリアスさと、目を離せない表情、静の演技の存在感を考えれば、まさに適役。大人の恋愛作品に定評のある同枠での主演抜擢も納得です。然るべき帰還をして挑むフジテレビ系初主演作、大いに期待しています!
綿貫大介
編集&ライター。TVウォッチャー。著書に『ボクたちのドラマシリーズ』がある。
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2024.10.17(木)
文=綿貫大介