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歌も18曲あり、踊りもあって……。マシマシで全部盛りの『バサラオ』

――今回の最初の本読みのときはどんな雰囲気でしたか?

中村 多分、ちょっと照れてたよね。

生田 いやもう本当に戯曲を読んでほしいんですが、バカみたいなセリフがいっぱいあるんですよ。美の真ん中にいるのがこの俺だ!みたいな、「えええーー」みたいなセリフをどう乗りこなしていくか。

中村 そこの照れや不安をどれだけゼロに出来るかというのが、斗真くんの役作りだと思うので、それを見ているとワクワクします。でも、僕が板の上で一緒に芝居をしていて少しでも「ふっ」ってなったら素に戻るだろうから、責任重大です。本読みでも「何言っちゃってんだ、この人」ってなっちゃいましたから(笑)。

――実際にお稽古が進んできたところで、今回の『バサラオ』について現時点(取材は6月中旬)でどんな感想をお持ちですか?

生田 歌も踊りもあって、立ち回りもあって、もちろんお芝居もあって。とにかくやることがたくさんあります(笑)。今の劇団☆新感線が“やりたいこと”を全部詰め込んでいる感じかな。でもお客さんとしては毎分毎秒何かが起きるから、かなり楽しいと思います。その分、我々は本当に準備が大変なんですが……。

中村 「稽古、最後まで出来るのかな、ちゃんと」って思うくらい、本当にやること多いよね。まだ一回しかやってないところもあるし……。大丈夫かなと思いながら、いまからやれることは個人でやっておこうという準備を、みんな始めています。

――さきほど生田さんが「新感線がやりたいことを全部詰め込んだ」とおっしゃいましたが、具体的にはどのような感じですか?

中村 舞台に出たら戦ってるし、歌も18曲あるんだっけ?

生田 そう、18曲。もう、ミュージカル(笑)。

中村 そうそう。何曲か減らしてほしいって思うんだけど……(笑)。僕らだけでなくて、劇団員の方も「今回の物量はちょっとエグいね」って言ってるんです。これがラーメンだったら、もうマシマシすぎて食べ終わったあとに吐いちゃいそうなくらい(笑)。

――今回は【ピカレスクロマン】ということで、生田さんが演じられるのはヴィランであり、色悪だと思います。今までの生田さんのキャラクターとは真逆ですが、どんな感想をお持ちですか?

生田 いつか自分も新感線の悪役をやってみたいなとずっと思っていました。劇団☆新感線が描く悪役というのは、独特の色気というか、触れてはいけない危うさとか、そういったものが描かれていて、40歳になる年にこういう役をいただけたというのは、とても感慨深いですね。

 一昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で僕は源仲章というちょっと悪い役を演じていたのですが、それをいのうえさんと中島かずきさんがご覧になったことで、今回主役が悪役になったという経緯もあるんです。過去に“点”のように打ってきたものが、だんだん繋がってきているという感覚はあります。

 40代の始まりで今まで経験したことのないような役にたくさん出会えるといいなと願っていますが、その始まりとしてはとても楽しみなキャラクターですね。

後篇に続く

生田斗真

1997年、連続テレビ小説『あぐり』(NHK)でドラマ初出演を果たす。2007年、ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(CX)の出演を機に注目を集め、以降、ドラマ・映画・舞台を中心に活躍。社会派作品でのシリアスな演技やアクションへの挑戦、映画でトランスジェンダーの女性役を好演するなど実力派俳優として幅広い作品に出演している。近年の主な出演作に、【ドラマ】『警部補ダイマジン』(23・EX)、特集ドラマ『幸運なひと』(23・NHK BSプレミアム/NHK BS4K)、【映画】『告白 コンフェッション』(24)、『渇水』『湯道』(23)、『土竜の唄 FINAL』(21)、『友罪』(18)、【舞台】『てなもんや三文オペラ』(22)、「挑む Vol.10~完~」新作歌舞伎『赤胴鈴之助』(21)などがある。劇団☆新感線には、『スサノオ~神の剣の物語』(02)、『Cat in the Red Boots』(06)、『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』(16)、『偽義経冥界歌』(19-20)以来5作目の参加となる。2025年放送予定のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』への出演を控える。


中村倫也

2005年に俳優デビュー。数々のドラマ・映画などの映像作品や舞台作品に出演し、確かな演技力と豊かな表現力で役者として存在感を放っている。また、近著に「THE やんごとなき雑談」「THE やんごとなき雑炊」など俳優業のみならず多方面に活躍の場を広げる。14年に初主演舞台『ヒストリーボーイズ』で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。19年にはエランドール賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に、【ドラマ】『沈黙の艦隊シーズン1~東京湾大海戦~』(24・Prime Video)、『ハヤブサ消防団』(23・EX)、『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(22・TBS)、【映画】『ミッシング』(24)、『沈黙の艦隊』『宇宙人のあいつ』(23)、『ハケンアニメ!』(22)、【舞台】『OUT OF ORDER』『ケンジトシ』(23)など。劇団☆新感線には『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』(16)、『狐晴明九尾狩』(21)以来3作目の参加となる。主演ドラマ『Shirink-精神科医ヨワイ-』(NHK)が8月31日より放送スタート。

2024年劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演
いのうえ歌舞伎『バサラオ』

作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
出演:生田斗真 中村倫也/西野七瀬 粟根まこと/りょう/古田新太 他

「ヒノモト」と呼ばれる国で幕府と帝が相争う時代を舞台に、自分自身の美しさを武器に天下取りを目指す男、そんな男の参謀としてバディとなる元・幕府の密偵の男、そしていきすぎた自分の信念のために裏切り裏切られる人々の物語。コロナ禍以降、意識的に明るい作品を上演してきた新感線が、久しぶりに楽しいばかりではない、今までとはひと味違ったダークなトーンの作品を上演!

<福岡公演>博多座 2024年7月7日(日)~8月2日(金)
<東京公演>明治座 2024年8月12日(月休)~9月26日(木)
<大阪公演>フェスティバルホール 2024年10月5日(土)~10月17日(木)

http://www.vi-shinkansen.co.jp/basarao/

次の話を読む中村倫也が語る、盟友・生田斗真に感じる魅力は「圧倒的な美」。そして共演する古田新太の印象は…

2024.08.09(金)
文=前田美保  写真=佐藤亘
ヘア&メイク=豊福浩一(Good)、スタイリスト=前田勇弥<生田斗真さん>
ヘア&メイク=Emiy、スタイリスト=戸倉祥仁(holy.)<中村倫也さん>