韓国に渡る前夜、ミントは……

 猫好きにおなじみの「猫吸い」もJOさんのバージョンはちょっと独特。

「僕がまだ小さかったころはミントを枕にして寝転がったりしていたので、そこから自然に始まった、あいさつみたいなものです。主に吸うのはお腹。ペコッと凹むのが面白くてやっていました。でも吸ったままだとミントが冷えてかわいそうなので、次に思い切り息を吐きかけます。すると暖かい蒸気が顔にかかって気持ちがいいんです」

 自分が穏やかな性格になったのは、猫と一緒に過ごしてきたことが影響している気がすると語る。ミントは基本は猫らしく気まぐれだが、こちらの気持ちを察してくれることもあった。

「小さいころ、ある日お留守番をしなくてはいけなくなったんです。僕はちょっと怖くてベッドでじっとしていました。そうしたら、ミントがそっと寄ってきて、ずっとそばにいてくれたんです」

 家族にもあまり甘えないJOさんが、唯一甘えられる相手でもあった。しかし、17歳の時、芸能の世界に飛び込むため、単身韓国に渡る決意をする。

「ミントを残して行くのは心配でした。日本を発つ前夜も一緒に寝て、『大丈夫だよ』とひとりで話しかけていました。いつもはすぐに寝てしまうのに、僕がいなくなるのを知っているかのように、座って話を聞いてくれました」

 ミントのことを思わない日はない。離れて暮らしていても、家族に様子を尋ねたり、しばしば写真を送ってもらっているという。韓国でも、野良猫に遭遇すると触れたくなるが、残念なことにすぐ逃げられてしまうのだそうだ。

「どんな猫にも好かれるものと思っていたのですが(笑)。体が大きいから怖いのかもしれないと最近気づきました」

2024.07.08(月)
文=黒瀬朋子
写真=黄瀬麻以
スタイリング=丸山佑香(makiura office)
ヘア=KOTARO
メイク=津田雅世(mod's hair)

CREA 2024年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

猫のいる毎日は。

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人生に大切なことを猫は全部知っています。過去や未来ではなく、いまを生きること。必要なときに食べ、好きなときに眠ること。人に気を使いすぎないこと――。そう、猫は最高! それにしても、私たちはなぜこんなにも、この不思議な生き物に魅了されてしまうのでしょうか。1998年に日本の女性誌ではじめて「猫」を特集し、パイオニアだったCREAが、終わらない猫ブームが続くいま、12年ぶりに、猫と人との幸せな関係を紐解きます。