今回は、生え始めた白髪が気になっている方へのお話。

 これは終わりのない戦いの始まり。抗うべきか、受け入れるべきか……。洗面台の前で、食い入るように鏡を覗き込む姿が目に浮かびます。

 「将来はグレイヘアにしようか」と考えていても、それはまだまだ先の話です。いっそのこと真っ白になって欲しいところですが、「一夜にして一気に白髪に変わる」という事例も、残念ながら都市伝説でしかありません。

 歳相応にキレイでありたいけど、現状はどう乗り越えればいいの?

数本の白髪の場合、周りの人には見えていない?

 まず、白髪は黒い髪よりもパサパサしてうねりも強いため、ヒョロヒョロと飛び出して悪目立ちしやすい特徴があります。

 更に、白髪は「自分の目に見える部分」に出てきやすい傾向が強いです。美容師である僕の経験上、白髪は目につきやすい「顔周り、頭頂部」に生えてくることが多く、対して「襟足部分」から増えていくケースは少ないです。

 ですが、初期段階のチョンチョンと数本出てきている白髪は、意外にも周りの人には見えていないことが多いです。一箇所に束のように生えていると周りからも認識されますが、引いた場所から見るだけだと、全体に紛れてほとんど認識できないのです。

 大前提として、気になるその白髪は、自分が鏡越しにまじまじと見ているから気になってしまうだけかもしれません。

▼目立つからって、白髪を抜くのは危険!

 それでも気になる場合、どうすべきでしょう? 美容師の立場では、安易に「抜く」ことはオススメしません。

 お客様からは「白髪は抜いたら増える」といった風説を聞くことも多いですが、これに科学的な根拠はありません。白髪を抜くことの結果として美容師が恐れているのは、毛根が炎症を起こして死んでしまうことです。毛根が死んでしまうと、そこから髪は生えてこなくなる可能性があるのです。

 これに対しても、「私は多毛だから、ちょっとぐらい減っても大丈夫」と考える方もいるかと思います。ですが、前述した通り、白髪は「顔周り、頭頂部」に集中して生えやすいです。気になるたびに繰り返し抜き続けていると、将来的に「その部分」に新しい髪が生えなくなり、薄くなってしまう。

 「数本ぐらいいいでしょ」と抜いている場所に、実は白髪が集中的に生えることに気づかず抜き続けていると、その周辺の毛根が死んでしまい、いつの間にかその部分がスカスカになる可能性があるのです。

 特に女性の場合、年齢を重ねるうちに薄毛に悩む方が多くなります。年齢と共に髪は細くなるので、一本一本にハリコシがなくなります。細くなることで髪全体の体積も減ることになり、毛量も少なく感じるようになります。

 それゆえに、頭皮が見えるほど髪がぺチャンとしてしまうことに悩む高齢の方は多いです。安易に白髪を抜くことで「顔周り、頭頂部」の毛が少なくなってしまうと、より薄毛が目立ってしまうのです。

2023.09.24(日)
文・イラスト=操作イトウ