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「おばちゃんぽい企画出してよ」と言われたら嬉しい

――ADから始まってディレクターとして自分の企画を通して番組を持ち、その後プロデューサーになるのが制作の方の王道のキャリアパスだと思います。最初に通った企画はどんなものでしたか?

 私も最初はもちろんディレクターや演出になりたかったんですが、ADの頃に三宅さんや私の師匠である石井(浩二)さん(「ココリコミラクルタイプ」などを担当)に「お前はディレクターよりプロデューサーのほうが向いている」と言われたんですね。それでそのままAPになったので、実はディレクターをほぼやったことがないんです。以来、ずっとプロデュース業務ですね。

――そうだったんですね。「プロデューサーのほうが向いている」というのは性格的な部分だったんでしょうか。そもそもディレクターとプロデューサーの仕事の違いって何なんでしょうか。

 どうなんでしょう。でも自分が今ここまでやってこられたのは上司に導かれてプロデューサー業務についたおかげだと思っているので、やっぱりちゃんと見ていてくれたんだなと思います。それに、ディレクターとプロデューサーの仕事にきれいな線引なんてないんですよ。プロデューサーが企画を通して「演出を◯◯さんにやってもらおう」と決めるものもありますし、ディレクターが企画を通して「プロデューサーをやってください」と言われることもありますから。キャスティングや内容に関して話し合うことも多いですし、私自身はどちらかというと演出と一緒になって番組をつくるタイプのプロデューサーかなと思います。

――企画出しに関して、個人的な話で恐縮ですが、男性が多いチームで仕事をしていると「女性ならではのアイディアを」と言われることがたまにあって釈然としない気持ちになるんです。

 わかります、わかります。

――若手時代、そういうことはありました?

 それは普通に言われましたね。企画を通しているのは男性でしたし、さっき言ったことと矛盾するようですが男性社会ではあったので、そこはやっぱり大変でした。なかなか企画が通らなかったりもしましたよ。

――特にバラエティは外部の作家さんなども含めて男性スタッフが大半ですよね。

 本当にそうですね。ドラマは女性のプロデューサーや演出で活躍されている先輩がたくさんいたので、「ドラマのほうがやりやすいのかな」と思った時期もありました。だけど結局は一緒だなと思います。今はたとえば「おばちゃんぽい企画出してよ」って感じで言われたらうれしいですよ。おばちゃんなんで。

――この企画をやっていても、ドラマに比べてバラエティは女性の作り手で名前が知られている方が少ないなと感じます。

 でも今は、派遣の方や契約の方まで含めて何百人といる中で女性はすごく多いですよ。緩やかに増え続けていると思います。社員に関しても昔は新卒採用の男女比が2対1、3対1くらいだったのが、今は五分五分か年度によっては女性のほうが多いときもあると聞いています。同時に、ジェンダーレスな時代になっているので、女性だからどうこうということでもないんだと思います。

2023.04.21(金)
文=斎藤 岬
写真=平松市聖