実は最初に考えたのは5倍難しかった「パプリカ」

――おふたりは国民的ダンスを次々に作られていますが、ヒットの理由をどう考えていますか?

辻󠄀本 うーん……パプリカダンスのときは、依頼元からいろんなヒットの法則みたいなのが送られてきたけれど、そんなものないですよね。

MIKIKO 「流行らせたいのでキャッチーなものを」と言われがちなんですけど。パプリカダンスだって簡単じゃないですよね。

辻󠄀本 本当にそう。実は最初に考えたのは5倍難しかった(笑)。でも、踊る子どもたちの個性を解き放ち、ご高齢の方々もまねできるようなものをと思ったときに今の形に至りました。

MIKIKO いろいろ詰めこみたくなるんですよね。歌詞とかメロディーに合ったものを。

新垣さんがゆるく踊ったのがよかったんだと

辻󠄀本 振付は必ずしも簡単でなくていい。恋ダンスだって難しいのにあんなに流行ったんですから。

MIKIKO 大流行するなんてまったくの想定外です。おそらく新垣さんがゆるく踊ったのがよかったんだと思います。『恋』という曲のMVを見て真似しているという設定もあって。視聴者の方がその雰囲気を感じて、「踊ってみた」につながったのではと。

辻󠄀本 色んな人が踊って動画を上げる時代になって、隔世の感。

MIKIKO 恋ダンスのときは、自分の手を離れて一人歩きしているのを傍から見ているみたいな感覚でした。恋ダンスを知らない人がレクチャーしている動画もあったりするくらいですから。特にダンスが流行っても、私たちは印税があるわけじゃないですしね(笑)。光栄ではあるんですけど。

辻󠄀本 たしかに(笑)。

MIKIKO 映像の世界は著作権がグレーというか……。たとえば楽曲が売れたらアーティストや作詞家、作曲家には印税が入りますけど、MVがヒットしても映像監督に入るシステムになってないんですよね。

2022.12.29(木)
文=粟生こずえ
写真=平松市聖
出典元=『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』