ディスコグラフィは“心のカケラ”を集めたアトリエのよう

 私が初めてスピッツと出会ったのはかなり遅く、5thアルバム「空の飛び方」だ。確かジャケ買い、人間で言うとルックスから入った感じである。羽を生やした天使のような人が微笑んでいる、オレンジ色のジャケットに惚れた。いざ聴いてみると、曲も声も歌詞も、全方位期待した世界観と完璧に一致! こっ、これはスゴイ! リアルと夢のちょうど間にある、小さな世界にトリーップ!!

 公式サイトのディスコグラフィのページは、心のカケラの収集家のアトリエと言っても過言ではなし。改めて見てみたが、ひー可愛いッ! 全シングル&全アルバムの並びは壮観。美しくユニークなデザインがみっしり、曲のタイトルも含め、目でも奏でてくる独特のスピッツワールド。そのキラメキは悔しささえ覚える! 揺るぎないセンスに対し猛烈に嫉妬するのは、私の情けない性分だ。

 一つくらい「やっちまったな!」というヘタレジャケットがないか探してみたのだが、ないなチッキショー! 見ているだけで日常が愛しくなる不思議。クローバーや地平線、星、貝殻の凹みや飴玉を包むセロファンの紙、額に飾ったお気に入りのポストカードなど、そこかしこに小さなもう一人の自分がいて、そこから一つの愛しい風景を「見っけ」する錯覚に陥る。

 スピッツの魔法、恐るべし――。このまま時間を忘れて見てしまいそうだ。イカンイカンと頭を横に振りつつプロフィール欄をクリックしたところ、ギター・三輪テツヤさんの好物がごぼう巻きであることが判明。非常に具体的かつ親しみのおける食べ物の名前に、「ごぼう巻き、今日の夕飯に加えてみるか……」と現実に戻ることができた。

2022.10.27(木)
文=田中 稲