暑すぎる日本の夏に贅沢なかき氷を

 2020年1月のオープン以来、素材を生かした香り高いお菓子とセンスあふれるスタイルで人気を集める、東京・九品仏のパティスリー「INFINI depuis 2020(アンフィニ)」。

 その味わいを店内の席でゆったり味わえるのが、東急田園都市線の桜新町駅から徒歩9分ほど、国道246号沿いの東京山手調理師専門学校内にある「café INFINI TOKYO YAMANOTE(アンフィニ東京山手)」です。

 暑い季節のお楽しみは何と言っても、かき氷。いずれの店舗でも(ただし、松屋銀座店は除く)毎年5月頃~9月半ば頃まで、常時2~4種類提供されていて、内容はそのときどきに入手した素材によって変わります。

 シェフ・パティシエの金井史章さんは、フランス・パリの三ツ星レストラン「ギイ・サヴォア」で修業し、帰国後はアラン・デュカス氏がプロデュースする東京・青山のビストロ「ブノワ」でシェフ・パティシエを務めるなど、レストランでの経験も豊か。東京・青山のミニャルディーズ(小菓子)専門店「UN GRAIN(アン グラン)でシェフ・パティシエを務めたのち独立し、「INFINI depuis 2020(アンフィニ)」を開きました。

 「これまでアシエット・デセール(皿盛りデザート)は数多く手がけてきましたが、日本の夏があまりにも暑すぎて、アイスクリームよりも氷を求めるお客様の声が多く、独立を機にかき氷をつくろうと決めました」と、金井さん。

 これまでフランスで「グラニテ」と呼ばれる、フルーツや乳製品などで味をつけた氷を削ったデザートをつくることはあったものの、削った氷にシロップなどで味をつけるスタイルのかき氷は、金井さんにとって初めての挑戦。

 「氷が溶けるにつれて味が薄まってしまうので、食べ始めは濃すぎないけれどしっかりめ、食べ終わりは水っぽいところもあるけれど味があるというバランスに持って行くまで苦労しました。試作して、お腹が痛くなるくらい食べました」と、笑います。

定番のイチゴ味もシェフにかかれば……

 お菓子づくりと同様に、素材をそのまま使うのではなく、香りや食感のアクセントを少し加えたり、ほかの素材と合わせたりして、「ケーキ屋さんだからこそできるかき氷」にするのが、金井さんのスタイル。「フレーズ」は、ふんわり削られた氷に色鮮やかなイチゴのクーリ(ソースの一種)がかけられ、中にはイチゴの軽いコンポートと練乳ソースが隠れています。

 てっぺんにとろりとかけられたフロマージュ・ブランのソースとともに味わえば、やわらかな乳の酸味と甘酸っぱいイチゴと出合い、華やかな香りと豊かな果実味が押し寄せて、まさにレストランクオリティのみずみずしいハーモニー。そばには熱海の橙の花からつくらたネロリのソースが添えられていて、かければ上品でやや苦みのある花の香りに包まれ、一気に清々しい味わいへと変わります。

 「フローラル感を楽しんでいただきたくて、イチゴにネロリを組み合わせました。クーリにもネロリのシロップを加えていて、イチゴのコンポートにも実は気づかれない程度にバラの香りをほんのりと。少しフローラルなイチゴの香りを感じていただけるかと思います」と、金井さん。

ミルキーに仕上げたメロンのかき氷

 一方、青肉メロンを使い、見た目にも涼やかな「メロン」は、フレッシュメロンのソースと果肉、杏仁のような香りのアーモンドミルクシロップ、ミントのジュレ、泡立てた生クリームの組み合わせ。

 「メロンのブランマンジェから発想しました。清々しいメロンの香りに、中から現れるミントのゼリーでさわやかさと青々しさをプラスしています。横に添えた練乳のシロップには、ラベンダーを香らせて、味と香りの変化が楽しめるようにしました」と金井さんは話します。

 味わえばさわやかさが体を駆け抜け、さまざまなハーブが香るプロヴァンスを旅しているかのような気分。プルンとしたジュレの食感も絶妙です。

本店ではテイクアウトスタイルのかき氷を提案

 九品仏の本店では、テイクアウトできるスタイルでかき氷を提供しています。こちらは、高知県産の和紅茶をストレートに使ったシロップと、練乳と合わせてミルクティーにしたシロップを交互にかけ、上にはベルガモットとパッションフルーツの酸味が弾けるメレンゲを。底には、ベルガモットの果汁で和紅茶を煮出した、心地よい酸味と香りあふれるプルプルのジュレが隠れています。

 どこまでも芳しく、まるで華やかなレモンティー、でも、すくう場所によってときどきミルクティーという味わいで、後口はさっぱり、すっきり。紙製の器で提供されているので、テイクアウトで気軽に味わえるのも嬉しいところです。

 「お菓子もかき氷も甘くておいしいだけでなく、記憶に残る香りをお届けたいと思っています。そして、高知県をはじめ各地の生産者のみなさんと繋がりがあるので、直接届けていただいた素材の香りを存分に楽しんでいただきたいですね」と、金井さん。エレガントな余韻が上質感を漂わせます。

café INFINI TOKYO YAMANOTE(アンフィニ東京山手)

所在地 東京都世田谷区深沢8-19-19
電話番号 03-5799-6987
営業時間 11:00~17:00
定休日 水曜日

INFINI depuis 2020(アンフィニ)

所在地 東京都世田谷区奥沢7-18-3
電話番号 03-6432-3528
営業時間 11:00~19:00
定休日 水曜日
https://www.infinidepuis2020.com/

2022.08.24(水)
文・写真=瀬戸理恵子
撮影=鈴木七絵(プレスキル・ショコラトリー)