「子宝の湯」と名高い名湯を心ゆくまで堪能する

 今回宿泊するのは、かけ流しの半露天風呂付きの、蔵造り風の離れ「ヴィラスイート」。メゾネットタイプの客室で、1階に座り心地のよい革張りのソファがあり、窓の外には竹林が広がっている。

 川の流れが見えるように、半露天風呂は2階に設置されている。ベッドも2階にあるので、目覚めてすぐに温泉へ直行するという夢のような時間が過ごせる。

 半露天風呂に浸かって竹林を眺めるだけでじゅうぶん気持ちいいのだが、せっかくなので露天風呂や貸し切り風呂にも出かけてみよう。

 湯殿は男女入れ替え制の「河鹿の湯」「行基の湯」のほか、女性用「滝の湯」、男性用「せせらぎの湯」、そして「子宝の湯」「伴の湯」の2つの貸し切り風呂のあわせて6つの湯船があって、館内で湯めぐりが楽しめる。

 まず向かったのは、チェックイン時には女湯の「河鹿の湯」。簾の先に吉奈川が流れ、ザアザアと川の流れる音が日々の喧騒を忘れさせてくれる。

 源泉は3本の混合泉で、pH9.13(湧出地ではpH8.8)のアルカリ性単純温泉。入った瞬間は少し熱く感じるが、数分のうちに温度に体がなじんでいく。「子宝の湯」といわれるゆえんはよく温まるからなのだが、この湯に浸かると自分の体が冷えていることを実感する。

 チェックイン時に貸し切り風呂を予約したので、早朝6時に「子宝の湯」に行ってみる。4〜5人は入れそうな大きな岩風呂を独り占め。子宝の湯を少し登った先には「子持ち地蔵」も安置されている。

 「行基の湯」は屋根もなく開放的な造りで、鳥のさえずり、川のせせらぎを遠くに聴きながら湯浴みを楽しめる。

 バスタオル類が浴場に用意されているから、手ぶらで出かけられるというのもラグジュアリー宿ならではの快適さ。

伊豆ならではの食事と、「富士見平」から望む眺望

 夕食は、江戸時代の建物を引き継ぎ、茅葺き屋根を復元した「懐石茶や 水音」で。お造りは、マグロ以外は沼津港から届いたもので、富士の麓で育った愛鷹(あしたか)牛など、地場の食材にこだわっている。

 朝食は和・洋から選べるメニューで、和食はわさびの葉を練り込んだ天城揚げや金目鯛など、伊豆らしい味わいを堪能できる。

 朝食時に立ち寄りたいのが、往復1時間程度の「富士見平歩道」。適度なアップダウンは食後の腹ごなしにちょうどいい。

 「富士見平」の名の由来通り、晴れていれば山の中腹から富士山が見える絶景が待っている。

 竹林の美しい森を抜け、アップダウンのある山道を行く。簡単にたどり着けると思っていたが、なかなかの運動量。スカートでも歩けるが、スニーカーは履いていったほうがいいだろう。

 標高362メートルの「富士見平」にたどり着くと、残念ながら空は厚い雲に覆われていて、富士山が顔を出すことはなかったが、思わぬ爽快感を味わうことができた。

 トレッキングで汗だくになったが、客室ですぐに温泉に浸かれるのはありがたい。これぞ至福の時間といえよう。

東府や Resort & Spa-Izu

所在地 静岡県伊豆市吉奈98
電話番号 0558-85-1000
料金 1泊2食 ひとり2万9,650円〜、ヴィラスイート 4万4,650円〜(ともに1室2名利用時)
http://www.tfyjapan.com/

文・撮影=野添ちかこ