「問題のあるレストラン」

「え。え、何でみなさん水着着ないんですか? わたし、いつも心に水着着てますよ。お尻とか触られても全然何にも言わないですよ。お尻触られても何とも思わない教習所卒業したんで。そういう服、男受け悪いよとかいちいち言ってくる人にも、えーそうなんですかー気を付けまーすって返せる教習所も卒業したんで。痩せろとかやらせろとか言われても笑って誤魔化せる教習所も出ました。免許証、財布にぱんぱん入ってます」

───「問題のあるレストラン」5話

 個性的な登場人物の中でもかなりのインパクトを残すのが、高畑充希演じる川奈藍里。

 キラキラ巻き髪量産型女子と称される川奈は、見た目も発言も「ザ・女子」。その叫びは同じような経験のある女性の心をドキッとさせる。

「『しずかちゃんはどうしていつも駄目な男と偉そうな金持ちの男と暴力ふるう男とばかり仲良くしてるかわかりますか? どうしてお風呂入ってるとこ覗かれてもすぐに機嫌を直すかわかりますか? どうして女友達がいないかわかりますか? 彼女も免許証持ってるんだと思います』というくだりも含め、社会に適応していくことを教習所の卒業に例えるセンスが光っている。男性脚本家がこれを書けるのがすごいと思います」(村上さん)

「anone」

「カノンさん。今、流れ星が見えました」

「地球も流れ星になればいいのに」

───「anone」1話

 ハリカが「ハズレ」名義で参加するチャットゲームで会話する、「カノンさん」とのやりとりに毎回心を掴まれる。

 「カノンさん」は実はかつて同じ施設で育った仲間だったことが判明し、二人はその施設を脱走したときに流れ星を見た思い出を語り始める。

「『地球も流れ星になればいい』という言葉はもうロマンティックすぎます。『パジャマは僕らのユニフォームですからね』『大丈夫は二回言ったら大丈夫じゃないってことだよ』『大切な思い出って支えになるし、お守りになるし、居場所になる』などほかにもこの二人のチャットには名言が多数!」(村上さん)

村上健志(むらかみ・けんじ)さん
(フルーツポンチ)

1980年、茨城県生まれ。「フルーツポンチ」のボケ担当。ドラマ好きの芸人らとともに「ドラマ部」を結成し、イベント等を開催している。

岡室美奈子(おかむろ・みなこ)さん

1958年、三重県生まれ。早稲田大学演劇博物館館長・早稲田大学文学学術院教授、文学博士。専門は主にテレビドラマ論、現代演劇論など。

2021.09.25(土)
Text=Daisuke Watanuki
Illustrations=Sayako Yamashita

CREA 2021年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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