名産のレモンを味わったり、巨匠・平山郁夫の名画を鑑賞したり
そんな瀬戸田は、柑橘類の名産地。島のくねくねと曲がる道の両脇や、高台の斜面は、たわわに実ったレモンやミカンで彩られています。レモンは瀬戸内一帯で有名ですが、実は瀬戸田が国産レモン発祥の地で、生産量も日本一だとか。
自然界にある石灰や硫黄などの有機農薬を使って、有機農業で柑橘類を栽培している「ロロファーム」を訪ねてみました。
有機農業の難しさは、即効性の無さ。木々をよく観察して事前に手入れをしてあげなくてはなりません。摘むのも、卵を扱うようにひとつひとつ、手で。これは香りを発する皮に傷をつけないため。
ロロファームの丁寧な仕事が、香りを高め、酸っぱさの中に甘みが出る、上質なレモンを生み出します。
同じレモンでも、秋口のグリーンのものは香りが強く、酸味もある。皮をすりおろして、刺身やステーキに振りかけると美味。春の熟成が進んだイエローのものは、甘みが増す。日々、レモンの味は変化するそうなので、用途に応じて使い分けられたら、贅沢ですね。
生口島は、日本画の巨匠・平山郁夫氏の生誕地でもあります。「Azumi Setoda」の近くに生家はあり、瀬戸田港の風景も画伯の水彩素描画「しまなみ海道五十三次」に描かれています。
大三島と結ぶ多々羅大橋や、子ども時代の画伯の遊び場だった国宝「向上寺三重塔」など、五十三次のスケッチポイントをめぐるのも、瀬戸田の楽しみ方のひとつでしょう。
画伯の特徴は、青・緑・金色や赤の色使い。深さなどで濃度が移ろう群青色の瀬戸内の海、同じ緑色はない常緑樹の里山、夕焼けの太陽、幼少期に日々見つめてきた瀬戸田の自然の色が作品の基盤になっているそう。
瀬戸田の風景を見れば、平山郁夫氏の作品の理解も深まるはず。秋なら、柑橘類のイエローやオレンジ色も加わり、パレットのように目に楽しいことでしょう。
瀬戸田
●アクセス 広島空港から車で60分
●おすすめステイ先 Azumi Setoda https://azumi.co/setoda/
【取材協力】
平山郁夫美術館 http://hirayama-museum.or.jp/
ロロファーム https://lorofarm.com/
Column
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2021.04.10(土)
文・撮影=古関千恵子