陸の冒険とはちがう海の自由さをこれ以上満喫できる本はない。――角幡唯介さん
◆『極北に駆ける』植村直己
グリーンランドの猟師村に住みこみ犬橇技術を習得した物語。
自分で犬橇をはじめてこの本を読み直すことで、植村直己の冒険家としての資質の高さが痛いほどよくわかった。
◆『秘境西域八年の潜行』西川一三
陸軍の密命をおびて情報収集のために西域諸国を流浪する話だが、途中で敗戦を迎えてからは完全に個人的貧乏旅行となってゆく。
戦中戦後におこなわれた先鋭的バックパッカー旅行の先駆け。
◆『アヘン王国潜入記』高野秀行
数ある高野本のなかでももっともぶっ飛んでいるのが本書。
ケシの栽培地として有名なゴールデントライアングルに潜入し、自らアヘン中毒患者となるという現代における探検旅行記の決定版。
◆『チベット旅行記』河口慧海
当時鎖国下にあったチベットに仏典入手のために潜入した探検界のレジェンド慧海。
学生時代にこの本に影響されたことで、私もまた単独でチベットに潜りこみ探検しようと決意した。
◆『信じられない航海』トリスタン・ジョーンズ
六年にわたり世界の海を放浪し、最後は目標のアマゾン川遡上をはたす。
陸の冒険とはちがう海の自由さをこれ以上満喫できる本はない。ぜひとも中古本で購入して読まれたし。
角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)
ノンフィクション作家、探検家。1976年、北海道生まれ。早稲田大学卒、同大探検部OB。2016年12月から太陽の昇らない暗闇の北極圏を80日にわたり一人で探検。その体験を綴った『極夜行』(文藝春秋)で18年、YAHOO!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞と大佛次郎賞を受賞。近著に『極夜行前』(文藝春秋)、『そこにある山-結婚と冒険について』(中央公論新社)がある。
文=CREA Traveller編集部