懸命に生きる人々の物語
『風に舞いあがるビニールシート』

“平和はかくも美しい。ボケでもなんでもすばらしい。どうかこの美しさが、すばらしさが永久に続きますように。彼らがその下に敷いたビニールシートをしっかりと大地に留め、荒ぶる風に抗いつづけますように――。”

【本のポイント】
「難民を保護し支援する国連機関UNHCRで知り合い結ばれた里佳とエド。フィールドに出ることを自らに課し続ける夫と、彼を理解しようとしながらも二人の周囲にあたたかな世界を築くことを拒まれ悩む妻。

 自分にとって一番大切なもののために、懸命に生きる人の生き方はずるくて、弱くて、滑稽なところもあるけれど、あたたかくて力強い。

 それはお金なのか、仕事なのか、家族なのか、命なのか――。

 もっとも優先すべき価値観に直面している今だからこそ、心を打たれます」(担当編集)

【あらすじ】
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられる人、犬のボランティアのために水商売のバイトをする人、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しむ人……。自分だけの価値観を守って、お金よりも大事な何かのために懸命に努力し、近づこうと頑張って生きる人々の1日を描いた6つの短編集。第135回直木賞受賞作。

風に舞いあがるビニールシート

著者 森 絵都
文春文庫 600円
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2020.05.27(水)
文・撮影=文藝春秋