イタリアでは今、何が起きているのか?

温厚なコンテ首相が優しく語りかける。

 この大勢の逃亡劇から2日後、3月9日(月)の夜に再びコンテ首相が会見。

 ロンバルディア州を中心とした北部に課せられた法令を3月10日(火)から全国に適用するといった旨を、今度はスクープ前に首相自ら予告したのでした。

「ひとり一人が責任ある行動をし、私たち自身、そして私たちの家族、私たちの両親、そして私たちの祖父母たちを守りましょう。習慣を変えるのは難しいことです。でも、猶予はありません。外出を控えるときです。私は家にいます」

  この直後の真夜中には、それでも各地のスーパーマーケットに行列ができてしまいました。が、棚が空っぽになるほどの騒ぎではなく、ほんの一部の“真に身勝手な人々”の間で起きただけ。イタリア人にも“緊急事態”がやっと浸透し始めました。

 そして3月11日(水)の夜。さらに対策を強化する法令が発表されました。冒頭でご紹介したように、全国で飲食店や店舗を終日クローズするというものです。

 このときのコンテ首相の会見は、より多くの国民の心を打つものでした。

「経済より今、優先すべきは国民の命です。今は人との距離が離れますが、それは再び熱く抱き合うため。国民がひとつになり、一緒に戦い抜きましょう」

 思い切りのよい決断に、さすがのイタリア人も「それぐらいしないとダメだね」と覚悟を決めたようで、現地はとても落ち着いています。 

 首相の会見での言葉「私は家にいます #iorestoacasa」はハッシュタグになり、SNSで料理や家で過ごす様子がアップされるようになりました。また、#andratuttobene(きっと全てうまくいくよ)が虹とともに描かれた旗をバルコニーや窓に掲げるプロジェクトが始まり、日夜問わず戦う病院スタッフや不安な人々の気持ちをホッコリさせてくれています。

 感染者数が多い分、高齢化社会のイタリアでは持病を持つ高齢者の死亡も増加しています(死因が別でも感染していたら感染者数にカウント)。心配は続きますが、医療崩壊を回避するために、必死に対策が進められています。中国から医師団も応援派遣されました。

※「年齢で命の選別をする、高齢者に挿管しない」とあちこちのニュースメディアで取りあげられたようですが、フェイクニュースであると判明。該当の病院が警察に被害を提出済み。

 今、ひとり一人ができることは、もうこれ以上、不用意な感染を招かないこと。高齢者にうつさないこと。それが医療機関に負担をかけず重症者を救う助けになる。

 対策本部の明確な方針や現状、透明性のある検査数も毎日、ライブな記者会見で伝えらえているため、疑心暗鬼になったり余計な詮索でストレスを感じることもなく、シンプルに(珍しく)国全体が一丸となり戦っています。

 だから、#私は家にいます。そして #きっと全てうまくいく、と願って。

※掲載の内容は2020年3月13日(金)時点のものです。

岩田デノーラ砂和子

慶応義塾大学卒業。リクルートを経て2001年からローマへ。現在はシチリア島パレルモ在住。ライター/メディア&トラベルコーディネーター/通訳/翻訳。La Vacanza Italiana主宰。
BLOG「イケメン犬ボン先輩とイタリア暮らし」にて、イタリアの新型コロナ関連情報を随時アップ中。

2020.03.15(日)
文=岩田デノーラ砂和子