南イタリア・レッチェで出会う
若き天才シェフの料理とは？

母の料理が与えてくれた愛を
人々と分かち合いたい

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　ほぼ独学で料理を学んだ。幼いころ、三人の兄弟とともに味わった母の手料理の喜びが彼女の唯一の導き手だ。豊かな感性は自由奔放に開花し、幼い日に食卓で感じた眩しいほどのプーリアの色彩と香りを皿の上に昇華させた。忘れられた郷土の料理を鮮やかに甦らせている。

「母が毎日料理を通して与えてくれた愛を人々と分かち合いたいのです」

　彼女が魔法の言葉で食材に愛情を注ぐと、普段は自由に生きる彼らも不思議と一つのハーモニーを奏で始める。シンプルなようで幾重にも絡み合う響きは、食する者の五感を刺激するや、瞬く間にコニャックを味わった後のような余韻を紡ぎだす。

　昨年、若きシェフの為の権威あるコンクールで優勝した。郷土料理への正統な理解、そして信念を貫く情熱と豪胆さが高く評価されての受賞だ。

　しかし、彼女に勲章など必要ないだろう。日々供する愛情いっぱいの一皿ひと皿が、何よりの“誇り”なのだから。

Photo＝Atsushi Hashimoto
Text＝Kumiko Asaoka
Coordination＝Discover Salent