旧市街の迷宮に登場した
地元っ子が通うマイクロ・ブリュワリー

昼間は太陽と地中海に恵まれたシチリアの豊かな食文化を体感できる、バッラロ市場も夜は異なるにぎわい。

 シチリア島の州都パレルモ。世界遺産のアラブ・ノルマン様式の歴史モニュメントが点在する旧市街は、まるでラビリンスのように細い路地が入り組んでいます。

 細く切り取られた青空にはためく洗濯物、シチリア語で立ち話を交わす人々の脇をすり抜けていくベスパや三輪アーペ。小さな広場でサッカー遊びに興じる子供たち。

 いつかみた古いシチリア映画を思い起こさせる路地裏の風景はどこか切なく、観光客にとってはフォトジェニックな憧憬の的ですが、そこには地元の人々の日々の暮らしが息づいています。

第二次世界大戦の爆撃の跡が残る旧市街の一角。

 そんな路地裏も、夜はまた別の顔。オレンジ色の街灯に照らされディープな香り漂う旧市街の“奥地”には、いわゆるガイドブックには載らない、地元っ子が夜な夜な通う人気の「ロカーレ」(バーやレストランなど)が点在しています。

 今回ご紹介する「バッララク」も知る人ぞ知る人気店のひとつ。旧市街の人気観光スポット、約1000年の歴史を誇るイタリア最大級の青空市場バッラロの裏手に見つかります。

ビールグラスを片手に路地に溢れ出す。人気店のある旧市街の路地裏のあちこちで、こんな光景を見かける。

 「バッララク」とは、いわゆるマイクロ・ブリュワリー(クラフトビール製造所)のこと。ご存じの通り、ここ数年クラフトビール流行りが続いています。

 世界各地で珍しいビールに出会える昨今、シチリア島産クラフトビールももはや珍しくはありません。日本へも輸出されているものもあるくらい。しかしパレルモ産、しかも旧市街のど真ん中で製造となると、そのレア度は相当高めではないでしょうか!?

ビール工房が併設された「バッララク」の店内。

 「以前は、家のガレージで作っていた」というほどビール好きのシチリア人仲間4人がオープンしたバッララクでは、製造から販売まですべて自分たちの手で行っています。そのため大量生産ができず、月間製造量はわずか3000~4000リットル。瓶詰めもしていないため、まさに「ここだけでしか飲めない」ビールなのです。

文・撮影=岩田デノーラ砂和子