大きな飛躍のカギは研究所のチームワーク

 過剰生成するタイプに育ってしまうのは、どこに原因が?

「そこが大事ですね。過剰生成メラノサイトになる場合は、育つ過程で表皮細胞から刺激物質を受け取った時です。受け取ると、メラノブラストの核の中にある、特定遺伝子が増加してしまうのです。この遺伝子はメラニン生成の司令塔の役割を果たす因子で、量が増えれば、メラニン生成指令がどんどん出て、結果、過剰生成メラノサイトに成長するというわけです」

 指令スイッチを入れる刺激物質は、さまざまで、もちろん紫外線の影響は大きいが、乾燥や肌あれ、炎症、精神的ストレス、不眠や暴飲暴食なども引き金となるとの話。

 では逆に、育つ過程で指令を受け取らずにスルーできれば、過剰生成してしまうメラノサイトにはならないということ?

「はい。ですから研究所としては、司令塔因子の増加を抑えてくれる成分を何とかして探し出そうという次の課題に取り組んだわけです」

 そこで役立ったのが何と、畑違いに思える白髪対策の研究だった。

「メラニン色素を多く作って髪を黒くする成分を探る中で、当然、昔から髪によいとされている海藻に注目しまして、担当者が国内海外のあらゆる地域から海藻を集めてメラニン合成量との関係を1つずつ調査していました。その中で唯一、メラニンを減らす海藻があった! という報告が来たのです」

 ならば今回の開発に有用? との予想が的中。この海藻エキスを与えると司令塔因子の増加を抑え刺激を受けても過剰生成メラノサイトにならないことが判明したのだ。

「それが北海道の納沙布(ノサップ)岬付近で採れる『アラリア海藻』でした。この発見のおかげで、色素細胞の成長過程を保護し、過剰生成メラノサイトにならないように育てる『育成美白』の考えが、美容液として形になったわけなのです」

 今あるメラニン色素の起源にさかのぼるという逆転の発想も素晴らしいが、さまざまな分野での地道な研究と横の連携もカギ。研究所のチームワークが、美白の概念を大きく広げる製品を生み出した。

2012.03.21(水)
text:Keiko Watanabe
photographs:Nanae Suzuki / Hirofumi Kamaya

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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