伊勢海老、鮑、鮮魚、海藻と揃った、伊勢志摩の海の幸。料理人がそれぞれに腕を振るった料理はどれも個性に溢れ五感を刺激してくれる。気鋭の寿司店から、地元で長く愛される居酒屋、新しいフレンチまで、多彩な口福の数々。スタイルや雰囲気は違っても、地元ならではの美食を堪能できる顔ぶれが揃う。

» 第2回 老若男女に愛され百年「一月家」
» 第3回 郷土料理も揃う居酒屋「向井酒の店」
» 第4回 漁師が営む魚居酒屋「大家族」
» 第5回 鉄板フレンチ「ラ ターブル ダキ」
» 第6回 旬を盛り込む一皿「ココット山下」


寿司も空間も凜として端正
全国に知られる江戸前寿司

◆こま田(こまだ)

 海の幸に恵まれつつも江戸前寿司を堪能するのは難しかった伊勢志摩に、救世主のように現れた「こま田」。

 店主の駒田権利さんは伊勢で寿司店を営んでいたものの37歳にして一念発起。今はロンドンに移転した東京「あら輝」の門を叩いた。

 「シャリの美味しさが衝撃的でした」と駒田さん。修業の後に帰郷。2013年に店を再開した。

 伊勢・河崎に立つ古民家を改装した空間は、赤い絨毯が印象的なカウンター6席。漂う清潔感が心地よい。

 寿司はつまみから始まるおまかせ一本だ。赤酢を使いほんのり温もりあるシャリはまろやか。

 握られた寿司は駒田さんの姿勢同様キリッと美しく、口にすればふわりとほどける。

取材・文=大和まこ
撮影=志水 隆