伊勢海老、鮑、鮮魚、海藻と揃った、伊勢志摩の海の幸。料理人がそれぞれに腕を振るった料理はどれも個性に溢れ五感を刺激してくれる。気鋭の寿司店から、地元で長く愛される居酒屋、新しいフレンチまで、多彩な口福の数々。スタイルや雰囲気は違っても、地元ならではの美食を堪能できる顔ぶれが揃う。

» 第1回 全国に知られる江戸前寿司「こま田」
» 第3回 郷土料理も揃う居酒屋「向井酒の店」
» 第4回 漁師が営む魚居酒屋「大家族」
» 第5回 鉄板フレンチ「ラ ターブル ダキ」
» 第6回 旬を盛り込む一皿「ココット山下」

老若男女に愛され百年
気取らない料理とカウンター

◆ 一月家 (いちげつや)

湯どうふ、なまこ、穴子フライ、ふくだめなど。

 伊勢二大居酒屋のひとつ「一月家」は1914(大正3)年の創業。14時半から暖簾を出し、3代目夫妻と4代目が切り盛りする街の居酒屋だ。開店と同時にほぼ満席になることもあるという人気ぶりは、今も昔も変わらず。

左:勘定を担当する3代目の進さん。酒は1合 300~350円。
右:料理を作ったり接客したりと大忙しなのは明るい人柄の4代目。「一月家」の価格はすべて税込み。

 「おじいさんから伝え聞いたんやけど、伊勢では立ち飲みできる酒屋を『たちきゅう』っていうんさ。うちはそこに椅子があって、料理屋と酒屋の間くらいやったみたい」と教えてくれたのは4代目の森田一也さん。

左:“ふくだめ”(900円)はトコブシとも呼ばれる貝をやわらかく炊いたもの。
右:醬油のタレで食べる“湯どうふ”(350円)は80度ほどの湯でゆっくり温めた名物。

 名物の湯どうふをはじめ、料理は黒い札に書かれて壁にずらり。頼み方次第では酒の肴にも、定食風にもなる使い勝手のよさ。食べ終わっても皿や徳利を下げないのもここの流儀。最後に数えてそろばんで勘定というのもお決まりだ。

左:凝縮した野菜の甘味が際立つカレー(600円)も人気のメニュー。
右:足の長い“いいだこ”(600円)は直炊きしたものに、二杯酢をかけて食べる。
左:ザルに入れ1時間ほど揺すった後、甘酢に漬けた“なまこ”(600円)は、サクッとした独特の食感。
右:裏返した札は他の季節のメニュー。
左:「一月家」の看板娘、笑顔が可愛い礼子さん。
右:伊勢市駅から徒歩10分ほど。

一月家(いちげつや)
所在地 三重県伊勢市曽祢2-4-4
電話番号 0596-24-3446
営業時間 14:30~22:00
定休日 水曜
※予約可

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美食の伊勢志摩で訪ねたい
地元の名店6選

取材・文=大和まこ
撮影=志水 隆