ハリウッドの製作現場のワーク・ライフ・バランスは…
――ところで、CREA WEBの読者は主に30代、40代の女性です。日本では、女性たちの多くは自身のキャリアと私生活、いわゆるワーク・ライフ・バランスをどう成立させるのかに悩んでいます。お二人は2018年から「SHOGUN 将軍」のプロジェクトに参画し、コロナ禍での撮影を経て、2024年にシーズン1が配信されるまでに6年もの歳月を要しています。その間にコンドウさんの妊娠、出産があったそうですが、キャリアと私生活をどのように配分されているのでしょうか?
コンドウ 私もその点は、ものすごく苦労しているのでよくわかります。仕事と私生活、両方とも同時に上手くやるなんて、無茶苦茶難しいというか、ほとんど無理なんですよ。だから、どちらも完璧じゃなくていい。「優」じゃなくて、「可」でいいんです。私自身、仕事の上ではプロフェッショナルになりたい、プロの世界の一員になりたいという強い願望がありました。でも同時に、子供を持ちたい、育てたいという願望がそれと同じくらいに、いやそれ以上に強くあったんです。だから私もとても悩みました。
――同じ悩みを抱える女性たちに、アドバイスをいただけますか?
コンドウ 私がいつも自分自身に言い聞かせていることは、仕事も実生活も、「どちらも、まあまあでいい」ということ。日々の生活は格闘だし、私もただただ今日一日をやり遂げることしか考えていません。とにかく次の1時間を頑張ろう、まずは目の前のことをやり遂げよう、という感じなんです。おそらく、これはどの女性も身に覚えのある感覚なんじゃないかな? 私からアドバイスがあるとしたら、「自分に優しくして。あなたはもう自己ベストを出しているから、それで十分」ということ。ほどほどで良いと知ることが、大切だと思いますね。
ジェイソン 女性はいつも闘っているんだ。
コンドウ そう、そうなの! なんでそれをもっと早く言ってくれないの?(笑)。このドラマのシーズン1とは、「女たちは戦いの中にいる」。それこそが真実なんです。
レイチェル・コンドウ
米ハワイ州マウイ島出身。曽祖父母が日本から移民した、日系アメリカ人。作家としていくつかの小説を文芸誌に発表し、2019年には「Girl of Few Seasons」が、その年の全米を代表する短編小説に贈られる オー・ヘンリー賞に入選。ドラマ「SHOGUN 将軍」 に、夫であるジャスティン・マークスと共に製作総指揮、共同クリエイター、脚本家として参加。エミー賞、ゴールデン・グローブ賞などを受賞した。
ジャスティン・マークス
米テキサス州出身。脚本家として幾つかの作品を手がけ、映画版『ジャングル・ブック』(2016)では米アカデミー賞脚色賞にノミネート。2018年に「SHOGUN 将軍」の企画を立ち上げ(ショウランナー)、妻のレイチェル・コンドウと共に製作総指揮、共同クリエイター、脚本家を務め、エミー賞、ゴールデングローブ賞など数々の賞を受賞。『トップガン マーヴェリック』(2022)の原案も手がけた。
SHOGUN 将軍
ジェームズ・クラヴェルの小説をもとに、シーズン1では、1600年、英国人航海士ジョン・ブラックソーン(コスモ・ジャーヴィス)が日本に漂着し、戦国大名・吉井虎永(真田広之)の家臣となり、通訳の鞠子(アンナ・サワイ)らと交流していく中で、按針という名で激動の時代を生き抜いていく姿を描いた。シーズン2では、エグゼクティブ・プロデューサーに昇格した真田広之をはじめ、二階堂ふみ、トミー・バストウらが続投し、目黒蓮、水川あさみ、窪田正孝ら新たなキャストも加わり、原作にはない10年後の虎永の野望が描かれる。シーズン1はディズニープラス スターにて独占配信中。
文・撮影=石津文子
