オリーブの本場カステルヴェトラーノの塩漬け工場へ
シチリア南西のベリーチェ渓谷は、DOP(保護原産地呼称)にも指定されている大粒のオリーブ、ノッチェッラーラ・デル・ベリーチェ種の生産地。この地域の中心となる町、カステルヴェトラーノ界隈にある工場では、壮大なオリーブの塩漬け作りが行われています。
右:工場とはいえ、ほとんど手作業。塩を投入し、苛性ソーダの反応を止めているところ。
まずは、周辺のオリーブ農家が持ち寄る果実を計量・選別。そして、それぞれの塩漬け工程に入ります。緑色のオリーブの塩漬け方法は各種ありますが、ここでは3つの方式を採用。この地域で生まれた「カステルヴェトラーノ方式」、全世界で汎用される「セビリア方式」、そしてシチリア伝統の「ナチュラル方式」です。
簡単に解説すると、カステルヴェトラーノ方式は、渋抜きのために苛性ソーダを用い、種に近いところまで浸透させたところで、マルサラの海塩によって反応をストップ。セビリア方式も、同様にアルカリ溶液で種と表皮の半分くらいまで浸透さた後、どちらも乳酸(菌)を加えて発酵させます。ナチュラル方式は昔ながらの方法で、渋抜きをせず、オリーブが持つ菌を利用して発酵させるため時間はかかりますが、地域や生産者による味わいの違いがより表現されることになります。
カステルヴェトラーノの工場からは、世界各地に輸出されていますが、どの方式で造るかはクライアント次第。コストやマーケット需要に合わせ、海外輸出用や大手メーカーへは前者2方式、イタリア国内もしくはシチリア島内では、ナチュラル方式がより好まれる傾向にあるそうです。
苛性ソーダは渋抜きを早める以外に、酸化防止効果もあるため、美しい緑色が残り、パリパリとした食感に仕上がるので、いかにも「オリーブ!」といった感覚を楽しめます。ナチュラル方式の場合は、多少の酸化により出来上がりは少々色の変化はありますが、独特の味わいが魅力。どちらを好むかは、人それぞれ……(個人的にはナチュラル方式のスキアッチャータに、野菜やハーブで味付けしたものが断然好みです)。
オリーブの塩漬けも、オイル同様、日本でも見かけることが多くなってきました。どんな製造過程を経てきたものか、知ってみると楽しみ方が増えそうです。
岩田デノーラ砂和子
2001年よりイタリア在住。約10年間のローマ生活を経て、現在は憧れだったシチリアの州都パレルモ在住。イタリア専門コーディネート・通訳チームBuonprogetto主宰。イタリア関連著書多数。近著『おしゃべりのイタリア語』が絶賛発売中。イケメン犬「ボン先輩」と、やらかし系イタリア人の夫「ピンキー」との日々を綴る人気ブログ:ローマの平日シチリア便りもほぼ毎日更新中。
文・撮影=岩田デノーラ砂和子
取材協力=Calogero Romano、Francesco La Croce、Hiroyuki Watanabe