違うジャンルのプロが息を合わせて紡いでいくリレー

――演技に関しては初挑戦だったと思いますが、いかがでしたか?

 誰かになりきるということは、スゴく魅力的なことで楽しいなと思いましたが、僕は役者ではなかったので、キャラクターと向き合う努力が必要でした。このシーンを撮りますってときに、すぐにはスイッチが入らないんですよ。スッとその役になりきれない。一日中、その役になりきってないとダメで、ちょっとでも、気を抜いてしまうと、自分がイメージする海にはなれない。だから、クライマックスのアクションシーンを撮る前などは、誰とも喋らなかったですね。

――ラッパーとしてステージに立つときのオン・オフとは異なるのでしょうか?

 ステージでパフォーマンスをしているときの自分は100%「自分」なんで、海のような「誰か」では決してないんですよ。それにアクションと演技とラップ、全部をシンクロさせて音楽のグルーヴに乗った間を作り出す作業が、スゴい大変でした。

――完成した作品を観たときの感想は? また、今回の体験から今後ラッパーとして、俳優として、新たな決意のようなものは芽生えましたか?

 映画を観たときは照れくさかったですが(笑)、撮影中のいろんなシーンや現場での思い出が頭に浮かんできましたね。でも、ちゃんと映画のキャラクターとして映っていて良かったです。現場は、全然違うジャンルのプロたちが息を合わせて紡いでいく、まるでリレーのバトンをどんどん渡していく感じで、それが化学反応を起こして、スゴいことになっている映画だということは……観れば分かります!

 今回の出会いで、完全に園子温という人間に魅せられました。また役者にチャレンジしたいと思っていますが、今度はもっと、これまで音楽でやってきたことを演技にフィードバックしたいなと思います。同時に、これからも音楽でも頑張っていこうと考えているので、映画で得た何かを、ちゃんと音楽にフィードバックしたいと思います。

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2014.08.22(金)
文=くれい響
撮影=三浦英絵