人と考えが違っても、「私はそれ、あなたはこれ」でいい

――水上恒司さん演じる夛田(ただ)は、舞台への出演をきっかけに、自分が演じる人物に飲み込まれていきます。そこがこの映画の核であり、独特のユーモアを生み出していますよね。黒木さんはこの物語をどうとらえましたか?

 水上さん演じる夛田、蔵之介さん演じる演出家の加藤、小池さん演じる脚本家の垣内。そして私が演じる米良。登場人物がそれぞれ持っているものや自分の中の正義を絶対視していて、決して譲らず互いに主張をし合っているから、それが滑稽に見え、笑えるんでしょうね。

――黒木さんは役への理解を深めようとするあまり、その人物に引っ張られてしまったことはありましたか?

 俳優によって演じる役へのアプローチは様々だと思いますが、私はどこか冷静さを残して俯瞰的な視点で自分を見るようにしているので、あまりないかもしれません。

 なので、この映画の登場人物たちのように、自分の意見を理解してもらいたいがために、不必要に人とぶつかるようなこともないんです。もちろん必要なときはじっくり話し合います。でも、考えなんて人それぞれなのが当たり前です。「私はそれ、あなたはこれでOK」という感覚なので、相手がぶつかってきたとしても「そっか、そういう考えもあるね」で終わることが多いです。

黒木華(くろき・はる)

俳優。1990年3月14日生まれ、大阪府出身。2010年、NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」にて俳優デビュー。映画『小さいおうち』で第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。近年の主な作品に映画『アイミタガイ』、『マジカル・シークレット・ツアー』、『時には懺悔を』、ドラマ「光る君へ」、「銀河の一票」などがある。夏に初の著書『はるの献立日記』(飛鳥新社)を上梓。11/20公開の主演映画『日曜のあと』が控えている。

映画『本当にあった話(の話)』

数十年前に世間を震撼させた“配偶者入れ替え連続殺人事件”をもとに、舞台が制作されることに。主演に抜擢された演技未経験の夛田(水上恒司)は、役にのめり込むあまり、やがて虚構と現実の境界を見失っていく。

出演:水上恒司、黒木華、山下美月、大東駿介、山本浩司、小池栄子、佐々木蔵之介ほか
監督・脚本・編集:武井佑吏
原作:鴻池留衣『本当にあった話(の話)』(文藝春秋)
©鴻池留衣/文藝春秋/2026「本当にあった話(の話)」製作委員会

10月2日(金)より公開中 テアトル新宿 ほか

次の記事に続く 朝4時におにぎりをにぎって現場へ向かうことも。「レシピ...