人口11人の過疎集落で出会った
「シチリアで最も美味しいパン」

受け継がれる伝統のパンを再現 体験イベントも！

左：パン職人マウリツィオ・スピネッロさん。「フォルノ・サンタ・リータ」の創業者。
右：大切に育てている自然酵母。パンからパンへと受け継がれていきます。

 マウリツィオさんのパンは、種からこだわり抜いて石挽き臼で精製されたモリーニ・デル・ポンテの有機古代小麦を素材に、水と塩、自然発酵の酵母だけを使っています。発酵させた生地をもとに小麦を継ぎ足しながら大切に育てられる自然酵母。永遠に受け継がれていく自然酵母は、かつてはどの家にもあり、それがその家の味になったものだそうです。

オリーブやアーモンドの木々で高温に熱した窯で、自慢のパンを焼き上げます。

1日あたり数百キロものパンを焼きます。

 市販のイースト菌より発酵力が弱く、不安定な自家製酵母。発酵中は、室温はもとより、音や光にまで気を配る必要があります。たっぷり時間をかけて発酵させた生地は、地元産のアーモンドとオリーブの薪窯で一気に焼成。香ばしく焼き上がったパンは、外はカリッと、中はフワッと……ではなく、外はカッチカチ、中は密度高くしっかりしていますが、噛めば噛むほど味わいが深まり、滋味そのもの。シチリア人にとっては、「懐かしい味」なのだそうです。

 モリー二・デル・ポンテのフィリッポ・ドラゴ氏のような仲間と共に、「失われていく伝統」をむしろ発掘し、そして次世代に伝えていく人生を選んだマウリツィオさん。「母が作って売っていたパン。あれが僕の人生になりました。毎日焼き上げるパンの一つ一つに、誇りを感じています」

「シチリアで最も美味しいパン」は、現在、サンタ・リータの工房もしくはイタリア各地で開催される有機食材マーケットやイベント、インターネットで購入可能です。また、2014年4月からは、パン作り体験イベントもスタート。彼の熱いパン作りも体験できます。

パン作りイベント。みんなとても熱心です。

文・撮影＝岩田デノーラ砂和子